本連載では、教員の複業が学校教育にどのように寄与するのかを述べつつ、現状の課題や理想の状態についても論じてきました。最終回となる今回は、私たちが教員の複業促進のため設立した「特定非営利活動法人越境先生」が果たすべき使命と、今後の展望について述べます。
「越境先生」は、「先生の『やりたい』を守る」 という哲学の下、「境界を、越えろ」というパーパス(存在意義)と「教員の越境・複業先進都市の創造」というミッション(中期目標)を掲げました。
教員の複業は法律的には認められているにもかかわらず、消極的な法の解釈やディフェンシブな運用によって、自治体ごとに制限の度合いが異なるのが現状です。
例えば、教育公務員特例法第17条は、教員の職の特殊性を考慮し、一般の公務員よりも兼業を弾力的に認めるために設けられた法律です。しかし、この法の精神は忘れ去られ、自治体によっては逆に教員の複業を厳しく制限する理由として使われています。
また、「教師が複業なんて…」という風土や視線も、大きな障害となっています。同僚の視線、子どもたちや保護者の反応・地域社会や世論など、制度とは違った面にも課題はあります。こうした要因が重なり、教員が社会とつながる機会を持つこと自体が難しくなっているのです。この状況で国全体の制度を一気に変えるのは難しいため、私たちはまず、「教員の越境・複業先進都市」を創ることに注力します。
・学校単位では難しい → 最終的な許可基準の策定は教育委員会が行う
・都市単位なら可能 → 教育委員会・自治体・管理職・職員と連携し、制度と運用を整備
・地域社会単位での合意が得られる → 保護者、市民、企業を巻き込みながら理解を促進
・成功事例を全国に波及できる → 都市レベルでの実証・他の自治体や国の政策に波及
私たちは「教員の複業が当たり前になる街」を生み出し、それを全国に広げることで先生の越境を可能にし、その先にいる子どもたちに面白い学校を届けたいと考えています。
日本社会全体に「生き方の多様化」が少しずつ広がる中、教員だけが変化から取り残されているのは、社会の発展にとって良いことではないと考えます。
・教員の複業を認めることで、社会と教育がつながる
・学校に新しい視点や価値観が持ち込まれる
・最終的には、子どもたちの学びの選択肢も広がる
教員が変われば、教育が変わる。教育が変われば、少し先の社会が変わる。
「境界を、越えろ」
越境先生の挑戦は、始まったばかりです。共に境界を越えていきましょう!
(おわり)