第10回 当事者の探究を大切にした「教職員の個別最適な校内研究」を振り返って

第10回 当事者の探究を大切にした「教職員の個別最適な校内研究」を振り返って
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 本連載の第1回で「校内研究の在り方に正解はない」ことをお伝えしました。数年前に行った「哲学対話」をきっかけとして校内研究の在り方そのものを問うことから始まった横浜市立保土ケ谷小学校の研究の特徴を一つ挙げるとするならば、教職員一人一人の「当事者性」に根差した研究であるということです。教師の学びはどうあるべきかを問い続け(第1~4回参照)、また学校長児童指導専任・事務職員・栄養教諭・技術職員・保護者などを含めた「当事者の探究」を手探りで行ってきました(第5~9回参照)。連載の最後は教職員はもとより、「保護者」も校内研究において当事者として探究した実践と「個別最適な校内研究」の総括についてお伝えします。

「保護者の探究」上部充敬さんの『先生と保護者で学校教育目標を語ろう』研

~ホワイトボード・ミーティング®を通して~

上部さんの「先生と保護者で学校教育目標を語ろう」研
上部さんの「先生と保護者で学校教育目標を語ろう」研

 私たちは学校での学びを教師の世界の中だけで語ってはいないでしょうか。学校を創るのは内側にいる人だけだと考えてはいないでしょうか。そんな気付きを与えてくれた本校の保護者である上部さんは、自身の探究について次のように語っています。

 「保護者が学校教育目標を意識すると、どのような変化が生まれるのか。こうした問いから、保護者・教職員・地域の方々や子どもと語る機会を設けました。対話を通じて、共創しながら伴走する姿勢の大切さを再認識し、保護者自身の視点や関わり方を見つめ直すきっかけになりました。この対話が、子どもの学びを支え、学校との関わりを楽しむきっかけになると考えています」

校内研究で対話する教員たち
校内研究で対話する教員たち

 連載ではこれまで、教職員一人一人の当事者性に根差した探究を紹介してきました。一律的な研究ではなく、バラバラな個人研究でもなく、この当事者性を生かし、一人一人に最適化された探究によって学び合い、幸せ創りや学校創りに少しでも寄与できればと、さまざまな葛藤を抱えながら研究を進めてきました。

 しかしながら、最後にお伝えしたいのは「個別最適な校内研究」が、どの学校にとってもベストな選択であるわけではないということです。校内研究に正解はなく、大切なのは全ての教職員が、「私はどうありたいのか」「何を、どう学びたいのか」について対話することができているかどうかだと考えています。

 現在、私の下にも「校内研究の在り方を問い直したい」という声が多く届いています。今後はさまざまな学校で共に学びながら、教職員一人一人が学びの当事者であり、その当事者の声を入れた校内研究はどうあるべきかを共に考え、創るお手伝いができたらと考えています。(おわり)

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