学校からSEL導入のご依頼をいただくと、ヒアリングをさせていただいた後に、「教員研修を実施しましょう」とお伝えします。
スタート時の教員研修では「エンパシーサークル」という手法で心が動いた体験について語り合ったり、これまでの人生の中で印象深い出来事やしてきた選択を道のように自由に描く「人生の道」というワークを基に対話をしたりします。
現在、先生方は自分の思いや感情に目を向けて、同僚と話をする機会がほとんどありません。その結果、職員室内がギスギスしていたり、教員間で助け合える関係性を築けていなかったりすることはよくあります。
対話を通じて、他者の話に耳を傾け、相手の気持ちや感情に気付くこと。そして、自分自身が今、どんな思いを抱いているのかに目を向けられるようになることが大切なのです。
自分と同僚の価値観や強みを知ることで、自然に教員間での連携も生まれていきます。それは、「学校」という総体として教員集団の力を高めていくことにつながります。
中には、対話の研修をすることに対し、「忙しい業務の中で、なぜ、わざわざ話をする必要があるのか」と否定的に見る方もいるかもしれません。NITS(独立行政法人教職員支援機構)では、「子どもの学びと教師の学びは相似形」だと伝えています。子どもに協働的に学ぶことを求めるならば教員も協働的に学ぶ必要がありますし、子どもを主語にした学校教育を実現するならば教員の主体性の尊重も欠かせません。つまり、子どもの学びの転換のためには、「まずは教員から」が肝なのです。
なお、私が代表を務めるrokuyouが拠点を置く沖縄県では、教員の精神疾患による休職率が全国平均の2倍以上に上っています。教育現場における働き方改革と、先生方のメンタルヘルスの改善は急務となっているのです。
SELの教員研修をきっかけに、「嘆きの共有の場」をつくり、対話文化を醸成していった学校では、ストレスチェック調査で「同僚からの支援がある」と回答した割合が全国平均を上回る結果となり、休職する教職員数も減少しました。その他にも、「お酒の出ない飲み会をしよう」と学校に対話の文化を根付かせていった先生もいます。
教員間の「聴く」が土台となれば、先生が子どもたちの話を「聴く」こともできるようになっていきます。「聴く」大切さを痛感した人は、他者の話も聴けるようになる。SELはそのきっかけを与えているだけに過ぎません。
教員と教員、教員と子ども、子どもと子どもの間に「聴く」文化を育んでいくことが、豊かな学びを生む「ウェルビーイングな学校」へ向かう糸口だと言えるでしょう。