第2回 「語りの前のマインドセット」

第2回 「語りの前のマインドセット」
【協賛企画】
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 「子どもたちが、私の話を聞いてくれない…」

 そんなふうに思うことはないでしょうか。私自身、自分の話が目の前の子どもたちにあまり響かない日々を過ごす中で、心の中でつぶやいてしまったことがあります。

 しかし、それは傲慢(ごうまん)です。語りの前のマインドセットを持たない教師の語りは、その話の中身がどれだけ崇高なものであっても、子どもたちの心には届きません。

では、どんなマインドセットを持てばよいのでしょうか。

 想像してみてください。教室にいる何十人もの子どもたちが、一斉にあなた一人の話を聴くのです。しかもそれは、「先生の話をします」と言うだけで、話す内容、時間、タイミング、回数などを全て担任であるあなたの一存で自由に決められます。ここまでの「語る権利」を既に与えられている担任という存在は、教室の中にいる唯一の大人として、子どもたち一人一人に感謝の気持ちを持って語るべきではないでしょうか。「どんな話も真剣に聴きなさい」なんて口が裂けても言えません。そんなことを思った時点で、子どもたちに語る権利は権力へと成り下がります。

 教師が子どもたち一人一人に感謝の気持ちを持って教壇の前に立った後、語り始める前にやるべきことがおのずと分かるはずです。それは、子どもたち一人一人を観察することです。たったの10秒でも構いません。「聞く準備」が全員できているかどうかを見取るのです。自分と目が合うかどうか、どんな表情でいるか、姿勢よく座っているか…。まだ準備ができていない様子があるのなら、教師の都合で勝手に語り始めてはいけません。その口を開く前に、その目でよく観察してみてください。語り始めるタイミングは、いつも子どもたちが教えてくれます。

 そんな聞き手である子どもたちにも、マインドセットが必要です。私は語りの実践を学級で本格的に行う前に、必ず子どもたちにこんな聞き手であってほしいと伝えています。例えば「今の自分はどうかな?これから自分はどうしたいかな?…を考えながら、先生の話を自分の話にしてね」「話を聞いて終わりにせず、いつもの生活で行動してね」といった内容です。こうして話し手である教師と、聞き手である子どもたちとのマインドセットの擦り合わせを事前に行うことで、語りはその学級の文化を形成し始めていきます。

 あなたに問います。「マインドセットをもった教師が意識し続けたい、語りを磨くための5つの力」とは?

 次回、またお会いしましょう。

子どものマインドセットシート「とっておきの話を聞くときにいつもたいせつにしてほしい10のこと」
子どものマインドセットシート「とっておきの話を聞くときにいつもたいせつにしてほしい10のこと」

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