第3回 語りを磨くために① ~探す力・創る力~

第3回 語りを磨くために① ~探す力・創る力~
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 「どうしたら、そんなにうまく語れるのですか?」

 教室で語る私の姿をたまたま見かけたある先生からいただいたこの質問に、一言で答えるのは不可能です。なぜなら、語りは以下の5つの力が結集して実現されるからです。

①探す力:語りの素材を探し出す力

②創る力:素材を使って語りを創る力

③見せる力:語りの中で素材の見せ方を工夫する力

④話す力:語りの中で話し方を工夫する力

⑤つなぐ力:語った後に別の活動や媒体と関連させる力

 今回は、「探す力」と「創る力」に焦点を当て、語りの磨き方に迫ります。

 「○○があったから生きてこられました」

 〇の中には…「仕事」が入ります。最近とあるテレビ番組で特集されていた愛知県西尾市の老舗和菓子店で70年以上働いてこられた96歳の牧敏子さんの言葉です。「仕事」と「生きる」が結び付くところが興味深いものがあります。ここから、「働くことは生きる力につながるみたいだね」という導入で入り、「どんなことが敏子さんの生きる力につながったのかな」と展開し、「皆さんも働く先にいる人のことを想像してみると、これから始まる委員会活動が生きる力になるかもしれませんね」と締めくくる。そんな高学年児童向けの語りができそうです。

 このように、語りの素材はたまたま見かけたものでよいのです。「世の中全てが素材」と意識して、日常を見つめ直してみてください。アンテナを高くして見つけた素材は、必ずメモを取ったり写真を撮ったりして残すことをお勧めします。

 それでもなかなか見つからない方は、拙著をヒントにまずは語りの素材とされているものに出合ってみてください。「こんなものも素材になるのか…」と気付く素材もあるはずです。そこから「探す力」は少しずつ鍛えられていきます。

 その上で、素材と子どもたちがどのように出合ったら面白いかを考えます。語りを創る際には、まず以上の問いを意識してみてください。

 先ほどの牧さんの言葉は、「働く先にいるお客さんを想像することが、生きる力になった」という70年以上にわたる壮大なストーリーと、委員会活動が始まる高学年の子どもたちが「働くことは、生きること」といった視点で出合ったら面白そうと考え、語りの素材として採用し、構成を考えました。素材と子どもたちとの出合いのイメージが明確になると、「創る力」は少しずつ鍛えられていきます。

 次回は、「見せる力」と「話す力」に焦点を当てて、語りの磨き方に迫ります。

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