今回は「見せる力」と「話す力」に焦点を当てて語りの磨き方に迫ります。
「語りがうまい=話がうまい」ではありません。話す力のみを比べたら、芸人さんや落語のプロ、ラジオのDJ、アナウンサーなど、他の職業の方も当てはまってしまいます。
語りがうまい教師とは、目の前の子どもたちの様子に合わせ、語りの中で見たくなる見せ方ができ、聞きたくなる話し方ができる教師を指します。
人間は聴覚よりも、視覚優位に情報を受け取る特性があります。だからこそ、話し方の前に見せ方を工夫します。例えば、語りの中でキーワードとなる言葉をこんなふうに見せられたら、子どもたちは〇の中身が気になって仕方がなくなります。
「〇〇〇〇病院」
一部を隠して見せるのです。そして、次のように付け加えます。
「ひらがな4文字が入ります」
「最後は小文字です」
皆さんは、何が入るか分かりましたか?正解は「おもちゃ」です。実際に「一般社団法人日本おもちゃ病院協会」という団体があります。
このように、少し見せ方を工夫するだけで、視覚優位の私たちは勝手に思考が働きます。あなたも前回の記事で気にならなかったでしょうか。これは言葉だけでなく、絵や写真でも同様の効果が得られます。「見せ方」は「魅せ方」です。どこを隠したらこちらの語りに魅力を感じてもらえるかを考えると、「見せる力」は少しずつ鍛えられていきます。
突然ですが、皆さんは小学生の安静時の心拍数がどれくらいかご存じでしょうか。1分間に80~100回程度だそうです。一方、大人は60~100回程度で、低学年児童とあまり年齢差がない幼児は100~110回程度だそうです。
私は、いつも聞き手の心拍数に合わせて話せるように、話すリズムと間の取り方を意識しています。例えば、次のように話し方を工夫します。
おもちゃ病院があるのなら…【間】他の病院があってもよいかもしれませんね。【速→遅】「筆箱病院」や「本の病院」、最近だと「タブレット病院」なんてものも必要かも!【遅→速】でも…【間】どんな物も大切に使う人ばかりなら…【間】どの病院も、いりませんね。【速→遅】あなたの周りにあるどんな物も、大切に使ってあげてください。【遅】
話す速度の緩急や間を意識することで、「話す力」は少しずつ鍛えられていきます。
次回は、「つなぐ力」に焦点を当て、語りを行う前後の実践について紹介します。