近年、国を挙げて食品ロス削減の取り組みが進められています。日本の小中学生は、1年間で一人あたり約7キロの給食を残しているとも言われており、日本では長年「残さず食べること」が大切にされてきました。
近年は、無理な完食指導は見直されつつある一方で、給食での残食を減らす取り組みとして「残食ゼロ週間」のような取り組みが、いまだに行われているところもあります。
具体的には、クラスの残食量を計測して廊下に掲示して可視化したり、それを他のクラスと競い合ったりすることで、子どもたちの残食を減らす意識を高めるための取り組みです。
計測をすると、やはり残食が減ることが多い一方で、それをプレッシャーに感じる子も数多くいます。私も以前、あまり食べられない子の保護者の方から「クラスでこのような取り組みが行われており、うちの子がクラスメートから『おまえのせいでクラスの残食が出た』と言われてしまい、学校に行くこと自体を嫌がっている」という相談を受けたこともあります。
では、こういった取り組みは全てなくした方がよいのでしょうか。私の考えでは「食べられない子がいることをクラスのみんなに共有したり、この問題について一緒に考えたりする時間をつくる」などをすれば、より良い食育の時間にできるのではないかとも考えています。というよりも、それをしないで「残食ゼロを目指す取り組み」だけを取り入れるのは、早く走れない子に「頑張って早く走ってください」とだけ言って、何のサポートもしないことと変わらないでしょう。それでは教育とは言えません。
また、以前保護者の方から「クラスの学級目標が『給食を残さず食べよう』になってしまい、残食が多いうちの子が不安な日々を過ごしています」という相談を受けたこともありました。私はこれを聞いて、非常に「恐ろしい」と思いました。そこには「頑張ったら食べられるでしょ?」という考えが、透けて見えるように感じたからです。
目標を掲げることが悪いとは思いません。でも、その目標を掲げたからには、食べられない側への適切なサポートや配慮が必要で、それがなければむしろ逆効果になってしまいます。