夏休みが近づくと、直近の週のどこかで必ず、夏休みの事前指導が行われる。多くの場合、保護者向けに作成される「〇〇小 夏休みの過ごし方」や「〇〇中 夏休みの生活心得」などの印刷物をもとに、学級担任が行うだろう。
この印刷物にはいろいろなことが書かれている。例えば、生活上の注意、学習の仕方、外出時の用心やマナー、各種事故防止、禁止事項、緊急の場合の連絡先――などである。これらを1項目ずつ説明していくと、結構な時間がかかる。場合によっては30分では済まないこともあろう。
ところが、先生方は真面目だし子供のために念入りにという思いもあって、全部の項目をきっちりと指導しがちだ。しかし、果たしてそれは必要なのだろうか。
結論から言えば必要ない。いや、むしろ全部の項目を指導してはならないのだ。指導項目はスカスカの方がいいのである。理由は4つある。
以上のことから、子供のために念のためと思って、全ての項目をきちんと指導することは、時間がかかる上に効果は少ない。むしろやらない方がよいのだ。
では、どうするか。
重要な項目に絞って、短時間で、効果的に指導するのだ。
何が重要な項目かは、地域や子供らの実態によって多少変わってくるだろうが、まず何と言っても、心身の安全に関することである。交通事故防止、水難事故防止、大雨・雷対策、不審者対応などだ(もっと言えば、生活習慣については、事前指導をしたところでだらける子はだらけるし、課題もやらない子はやらないから、事前指導は無駄である)。
これらを短時間で効果的に指導するには、視覚資料を使って具体的に行えばよい。例えば、「水難事故防止」とグーグルで画像検索をすれば、子供向けのイラスト入りの事故防止策がいくらでも出てくる。これらの中から子供の実態に合ったものを、教室の大画面テレビに映して指導すればよいのだ。これで、短時間で効果的な指導になる。
その他にも、重要な項目をいくつか指導するが、改めて考えてみれば、重要なものはそれほど多くないことに気付くだろう。基本的に、夏休みは子供らを家庭に返すのであり、生活指導は保護者に任せたい。
ただし、近年の傾向として、夏休み明けの不登校や自殺が増えていることから、2学期の始業式の登校ハードルを下げるような事前指導はしておいてもよいだろう。例えば、▽もしも課題が終わらなかったら、9月中に出せばよい▽始業式の日は授業はやらず、座席や係を決めたり、ゲームをしたりする――などと予告しておくのだ。