日本語教員養成へ優遇措置を 外国ルーツの子の支援で、有識者会議

日本語教員養成へ優遇措置を 外国ルーツの子の支援で、有識者会議
前回に続き有識者会議の5回目会合もオンラインで開かれた
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 外国籍や日本国外にルーツを持つ「外国につながる子ども」の教育支援の在り方について考える「外国人児童生徒の教育の充実に関する有識者会議」(座長・佐藤郡衛国際交流基金日本語国際センター所長、東京学芸大学名誉教授)の5回目会合が7月25日、オンラインで開かれた。指導体制の確保・充実に向けた取り組みとして、文部科学省から2024年度開始の「登録日本語教員」の資格制度について説明、各委員が意見を交わした。

 5回目会合では、外国につながる子どもの支援体制の拡充に向けた取り組みとして、事務局が日本語教員の登録資格制度について説明。同制度は24年施行の日本語教育機関認定法に基づき、外国人が日常・社会生活を共に円滑に営むことができるよう、環境整備を進めることが狙い。国が実施する試験に合格し、研修を修了した者が日本語教員として登録可能になる。25年6月時点で9418人が登録している。

 文科省は同制度の実践事例として、東京学芸大での取り組みを紹介。同大では教員養成課程・初等教育専攻国語コースの必修・選択科目として「日本語教員養成プログラム」を導入、必修単位の取得者に対し30単位の認定のほか、日本語教員試験の基礎試験が免除されるインセンティブ(優遇)の制度を設けていることを報告した。

 これに対し、オチャンテ・村井・ロサ・メルセデス委員(桃山学院大学人間教育学部人間教育学科准教授)は「登録プログラムに対し、より魅力を感じられるインセンティブの導入は重要。教員養成課程の学生たちは必修科目を取るだけで精いっぱい、他の選択科目にまで回らない学生が多く課題に感じている」と指摘。その上で、日本語教員養成に向け「学生の学習意欲や関心向上につながる取り組みが求められる」と強調した。

 オチャンテ委員の指摘を受け、吉田美穂委員(弘前大学大学院教育学研究科教授)は「実質的には限られた教科の学生しか取得できない。外国につながる子どもの増加に加え、資質能力を向上させる教育を考えると、指導教員になる人だけが知識を持っているのでは現場は回らない。さまざまな学生が教員免許にひも付いた形で学べる、別の制度があってもいいのではないか」と提案した。

 一方、小島祥美委員(東京外国語大学多言語多文化共生センター長准教授)は日本語教員を取り巻くイメージについて言及、「ボランティアのイメージが強く将来が描けない、専門職として認められないというイメージがある。専門職に位置付けるための社会構造や受け皿が必要という指摘を盛り込めたらいい」と述べた。

 日本語指導が必要な児童生徒数は23年時点で6万9123人と過去最高を更新。しかし、日本語教師などの指導者は4万人前後にとどまり、そのうち5割以上をボランティアが占めるなど指導体制の強化・拡充が急がれる状況だ。

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