「このようなことが起きた場合、あなたならどう指導しますか」。学校生活における1場面を想定し、どのように対応するかを問う場面指導。授業の単元などを指定して授業場面を展開させる模擬授業。いずれも教師を目指す者の実践的指導力をみる試験として実施される。それぞれ押さえておきたいポイントをみてみよう。
児童生徒に対する1場面、保護者に対する1場面などのケースが多い。まずは設定された場面をしっかり理解することが求められる。あいまいな理解で答え始めるのではなく、「それはこういうことですか」と確認しても構わない。場面によっては不適切な対応があるわけだから、設定された状況をしっかり捉え、適切な対応を示す必要がある。受験者の何を見ようとしているかというと、実践的指導力である。教育に関する知識や理論だけではなく、学級担任や教科担任として、この人物に児童生徒を任せていいかどうかを判断する。そのために、誠実さ、思いやりはもちろん、とっさの判断力、思考の柔軟性、教員としての使命感などが試される。問題への対応は、個人としてではなく、学校という組織の中で考えることが重要とされる。校長など管理職への連絡と相談、同僚との連携などを念頭に置くとよいだろう。ただしポイントは、自分の考えをもっているかどうかである。管理職への相談が大事といっても、ただ指示を仰ぐだけ、あるいは頼りっぱなしのような印象を与えると逆効果である。また「まずは記録をきちんととってから対応を考えたい」などのように、消極的な印象を与える回答も避けたい。「学校という組織の視点を持つ」「児童生徒や保護者の話を十分に聞く」点を大事にしながらも、教員として自らの役割をしっかりと押さえた考え、行動を示すようにしたい。
自分は適切な授業を行うことができる、という点を強くアピールをしなくてはならない。だから、明るく大きな声で模擬授業を行うのが基本である。恥ずかしそうなそぶりをする受験者も少なくないようだが「なり切って演技する」のが大事と心得よう。模擬授業の印象をよくするための最重要ポイントは、次に示す。
終了後、引き続き面接が行われ、授業の視点や考え方についても問われる場合が多い。教材解釈力、指導力、教科専門性、指導の観点、単元の構成などについて質問される。主な質問項目を別表にまとめておいたので、準備をしておこう。
授業中に騒いでいる子が何人かいます。対応してください。
全体に対しては、何か具体的な作業を指示して集中させる。一方、騒いでいる数人の子供を集めて指導をする。そのときに、「なぜ騒いでいるのかを、しっかりと聞き取る」「周りに迷惑をかけないよう注意する」よう心掛ける。
保護者から「通知表の評価の仕方に問題がある」と電話によるクレームがありました。どのように対応しますか。
保護者がどのような不満を持っているのか、誠実かつ丁寧に聞き取る。その上で担任としての考えを説明する。直接会って話し合うのが望ましい。電話でのやり取りは、表情が見えないだけに感情的になりやすい。
クラスでAが物を盗むといううわさが出ています。Bから「多分Aがとったと思う」と訴えがありました。クラスとAにどう指導しますか。
Aに確かめるのは十分に事実確認をしてからにする。そのためにはBや学級のメンバーから事実を丁寧に聞き出し、記録・分析する。その上で確実な証拠がある場合は、Aへの指導に当たる。クラスでは犯人探しをさせない。