いじめは、尊い命が奪われることもある人権侵害行為であり、その根絶は教師として最大の使命と言えます。しかし、ここ数年、認知件数は過去最多を更新しており、依然として大きな社会問題となっています。全国民がこぞって撲滅に向けて取り組まなければなりませんが、とりわけ、教職に就いた者の責任は甚大です。まずもって、重責を肝に銘じる必要があります。
算数の問題に悩んでいる様子の隣席の子に答えを教えたら泣き出してしまいました。これは「いじめ」ですか。いじめです――。文科省のホームぺージにある例です。「好意の行為がいじめだなんて」「被害者の主観に依拠しすぎていないか」など批判の声も聞かれます。でも、生徒指導の原則(前回掲載)を思い出してください。「心理的事実の受容」は最優先です。いじめの定義をめぐる論争は百家争鳴ですが、これ以上の定義はありません。「客観的事実」(いじめがあったのかの吟味)は後です。いじめ指導の「被害者保護の鉄則」は、断固守らなければなりません。
2013年、「社会総がかりでいじめに対峙(たいじ)していくため」、いじめ防止対策推進法が制定されました。これまでの悲惨ないじめの事案を基に、「根絶」への強い意志が集約された法律です。全文の熟読玩味(がんみ)は必須です。特に、教職員の責務を定めた第8条は日々反すうする必要があります。「いじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する」――。「思われる」に注目です。
いじめは、「発見」「訴え」「情報」という3つのルートから把握されます。「小さなサインから大きな問題」に気付く感性、子供が安心してSOSを出すことができる温かな人間関係、級友・家族・地域などから情報提供が絶えない信頼関係。この3つの「発見」の糸口を大切にしたいものです。
先の法律では、第14条に「豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地(そじ)を養うことがいじめの防止に資する」とあります。国の基本方針「別添」には「いじめに向かわない態度」という用語が使われています。教員研修会では、「いじめに○○○○○態度」を示し、○の部分を埋めてもらいますが、圧倒的多数の回答は「立ちむかう」です。「やめて」と言える子。親や教師に話せる子。そんな子を育てることも大切です。自身の答えを探しておきましょう。
法律では第23条に「いじめに対する措置」が定められています。何より大切なことは、「管理職・同僚への速やかな報告」です。初期対応の原則「被害者保護」「複数対応」「保護者連携」「丁寧な記録」の順守が求められます。採用試験では、記述・面接を問わず、実体験を基に自身の考えを堂々と記(話)してください。