どこでもそうですが、学校は特に安全(施設・設備などの物理的安全)・安心(平穏に過ごせる心理的安心)に過ごせる場でなくてはなりません。学校教育法が掲げる学校教育の目標には「健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うこと」と、学校保健安全法には「児童生徒に生じる危険について、適切に対処すること」と明記されています。学校は、児童生徒が「管理下」(休憩時間、通学途上などを含む)にある間、児童生徒の安全を確保する義務(安全配慮・安全保持)を負っています。その中心的役割を果たすのが生徒指導です。施設・設備の安全管理を強化するとともに、児童生徒が自ら危険を予測し、それを回避する能力(リテラシー)を高める安全教育の充実を図らなければなりません。
交通・生活・防犯・防災・情報の五つの安全を確保するため、計画的・系統的・包括的な危機管理体制を整備する必要があります。このためには、リスク(未然防止)・クライシス(危機対応)・ナレッジ(再発防止)の危機管理の段階を縦軸に、学校安全の五領域を横軸にとったマトリクスを作成すると効果的です。例えば、「自ら危険を予測し、それを回避する力」の育成は、リスクマネジメントの重要な指導内容ですが、これは学校安全の五領域全てに共通するものです。共通事項と特定の安全領域に特徴的な内容を区切ることで、指導内容・方法の差別化を図ることができます。
危機管理とは、危機的状況の予測・未然防止から、危機への対応、再発防止まで含めた一連の活動を総称します。リスク・クライシス・ナレッジとも、経済用語として使われ始め、教育用語としての歴史は浅く、かつては、「事前防止」「事後対応」「再発防止」と表記していました。リスクマネジメントは、登山の際、全員を対象に地形図を学んだり、走破できる体力を身に付けたりする「開発的機能」と、全員に目配りしながら具合の悪そうな者に声を掛け状態を確かめる「早期発見機能」に分けられます。クライシスマネジメントには、困難を抱える者を援助する「問題解決機能」と専門家(機関)の助力を求める「治療的機能」があります。ナレッジマネジメント(再発防止)は、他校(所)で起こった事件・事故を参考に、自校での発生防止策を即座に講じる「類似事故発生抑止機能」です。
「熱中症事故で体育館に温湿度計が設置されていなかったとニュースを聞いたら、翌日どうしますか」と問われたらどう返答しますか。「翌朝、体育館に飛んでいきます」との答えに、面接官は「頼もしさ」を感じることでしょう。子供の安全・安心を守るという意気込みは常に持ち続けたいものです。