重要な特別支援教育を押さえる

重要な特別支援教育を押さえる
【協賛企画】
広 告

全ての学校において実施されるもの 障害者差別解消法の施行など

教員採用試験でよく取り上げられるトピックの一つとして特別支援教育がある。筆記試験、面接などで関連の質問がよく出される。特に2016年4月に「障害者差別解消法」が施行された後の学校教育における特別支援教育の在り方については的確に勉強することが望まれる。

障害の有無で分け隔てられることのない共生社会へ

特別支援教育の概念は、2007年4月の文科省通知「特別支援教育の推進について」で、「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである」とされている。共生社会の形成に向けたもので、「自立・社会参加を支援」「教育的ニーズに応じた指導と支援」「発達障害も対象、全ての学校で実施」などが要諦である。「障害者差別解消法」の正式な法律名は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(13年法律第65号)」。国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として制定された。13年6月26日に公布され、16年4月1日に施行されている。障害を理由とする差別的な取り扱いを禁止するため、行政など公的機関に対し、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない」(同法第7条2項)と障害者に対する支援を義務付け、また民間企業にも努力義務を課した。この「合理的配慮」がキーワードとなる。

平等目指し「合理的配慮」を

合理的配慮とは、障害者が障害のない者と平等に人権を享受し行使できるよう、一人一人の特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のこと。著しく均衡を逸することなく、過度の負担にならない範囲で、障害者に支援・配慮することを求めるものである。同法に関しては、関連行政機関からリーフレットなどが出されており、ホームページで閲覧できる。それらを活用して内容をよく理解しておく必要がある。特別支援教育は、06年の学校教育法一部改正により07年度にそれまでの特殊教育から転換されたものであることもきちんと押さえておきたい。03年に出された調査研究協力者会議の最終報告「今後の特別支援教育の在り方について」において、「障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図る」と打ち出され、06年に学校教育法など関連の法令が改正、07年度からは従来の障害の種類と程度に応じた特別な場で行う特殊教育から、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに基づく特別支援教育となったのである。さらに、14年に国連の障害者権利条約が批准されて、特別支援教育をインクルーシブ教育システムの中で考えなくてはならなくなった。最近の特別支援教育の参考書などを入手して、これらの経緯を一通り学んでおきたい。文科省では、15年11月に「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針の策定について」(対応指針)を出している。学校教育については、「障害のある幼児、児童及び生徒に対する合理的配慮の提供については、中央教育審議会初等中等教育分科会の報告に示された合理的配慮の考え方を踏まえて対応することが適当であり、主として以下の点に留意すること」として留意点が示されているので、ホームページなどでこれにも目を通しておきたい。

新しい学習指導要領も

特別支援学校の新しい幼稚部教育要領と小学部・中学部学習指導要領は17年4月に公示。「障害のある子供一人一人のニーズに応じた教育の充実」を目指し、総則に児童生徒が豊かな創造性を備え、持続可能な社会の創り手となるための生きる力の育成などが示された。高等部学習指導要領については19年2月に公示。卒業後の自立と社会参加に向けた内容の充実を図っている。14年度からの就学先の決定方法の変更については、障害のある児童生徒も普通学校で対応することを基本に、特別支援学校に就学する児童生徒を「認定特別支援学校就学者」とする制度に変更している。制度の要点、背景を押さえておきたい。また「インクルーシブ教育システム」とは、障害のある児童生徒が十分な教育を受けられるようにする仕組みであり、障害を持たない児童生徒と共に学ぶ仕組みである。障害のある児童生徒が自己の生活地域において、初中教育を受けることが基本路線となっている。このほか、文科省では、19年1月に「文科省 障害者活躍推進プラン 発達障害等のある子供達の学びを支える―共生に向けた『学び』の質の向上プラン」を公表している。

広 告
広 告