【神谷正孝の教育時事2023(12)】全国学力・学習状況調査 全体の傾向とローカルな傾向を確認

【神谷正孝の教育時事2023(12)】全国学力・学習状況調査 全体の傾向とローカルな傾向を確認
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kei塾主任講師 神谷 正孝

 皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。今回は7月末に結果が公開された「全国学力・学習状況調査」について解説します。

◇ ◇ ◇

全国学力・学習状況調査とは

 全国学力・学習状況調査は「悉皆調査(全数調査)」形式で実施されています。全国の国公立小中学校と、一部の私立学校が参加しています。調査の目的として「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点」から、(1)学力や学習状況の把握・分析によって、教育施策の成果と課題を分析し、その改善を図る(2)個々の児童生徒への教育指導や学習状況の改善・充実などに役立てる(3)(1)、(2)を通じて教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する――の3点が挙げられています。

 小学6年生と中学3年生を対象として、国語と数学(小学校は算数)の2教科について毎年実施されている調査です。今年度は2019年度に引き続いて、中学校では英語を加えた3教科で実施されました(4年ぶり2度目、なお、理科は3年に一度の実施です)。

 学習状況についての質問紙調査は、学校質問紙は全ての学校で、児童生徒質問紙は約80万人を対象として、オンライン方式により実施されています。

ローカルな傾向も把握する

 小学校では、平均得点率は国語が67・4%、算数が62・7%でした。中学校では平均得点率は、国語で70・1%、数学で51・4%、英語が46・1%となっています。国立教育政策研究所のウェブサイトでは、都道府県別の状況が公開されているので、受験自治体の状況を確認しておきましょう。

 例えば、筆者が居住している宮城県では県全体でみると中学数学は48%です。宮城県は政令市である仙台市(政令市は別集計)が含まれるため、仙台市を除いた宮城県のデータも確認しておきます。それによると中学数学は44%となります。ちなみに仙台市は53%となり全国平均を上回っています。

 確認する際には、学力だけでなく学習状況についてもチェックしておくとよいでしょう。「児童生徒質問紙による調査項目」では、「学習に対する興味・関心」「規範意識」「自己有用感」「生活習慣・学習習慣」の項目別に、全国平均値を基準として各都道府県・政令市の児童生徒の実態が見えてきます。

 例えば、宮城県では県全体でみると「小学校算数への関心等」が平均値である5・0より下回り4・7という数値になっています。また「中学校英語への関心等」についても4・7という数値になっています。仙台市を除いた宮城県のデータでは、「中学校英語への関心等」はさらに下落し4・6という数値になります。ちなみに仙台市では同項目は4・8となっています。

 各項目の具体的な数値を押さえる必要は全くありませんが、全国平均値と比べた場合の状況について(上回るのか、下回るのか)と全国平均値からの乖離(かいり)の傾向を把握しておくと、各自治体が策定している教育振興基本計画や、各種教育施策についても理解が進むはずです。

中学英語について

 今回「話すこと」の得点率の低さが話題になりました。1人1台端末を使用した「話すこと」の試験では、約6割の生徒が0点という結果が出ています。

 この結果について7月31日付教育新聞のオンライン版では文科省と国立教育政策研究所のコメントが紹介されています。

 「『全般的に問題が複雑で、生徒にとって難しかったかもしれない』と難易度設定に課題があったことを認めつつ、『4技能のうち、話す力の育成に課題があることも示された』」

 電子版で関連記事も確認しておきましょう。

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 図表ではSES(家庭の社会経済的背景)と平均得点率との相関も示しておきました。よく問われる学力調査についてもまとめておいたので、合わせて確認しておきましょう。

1.次の各文は「全国学力・学習状況調査」に関するものである。適切なものを一つ選びなさい。

1.全国学力・学習調査は,学力や学習状況の把握・分析によって、教育施策の成果と課題を分析し、その改善を図ることなどを目的とし,標本調査の形式で毎年実施されている。

2.全国学力・学習調査は,小学6年生と中学3年生を対象として、国語と数学(小学校は算数)・理科の3教科について毎年実施されている調査である。

3.令和5年度の全国学力・学習調査は,小中学校で英語を加えて実施された。その結果「話すこと」に課題があることが指摘されている。

4.全国学力・学習調査では,学習指導要領で育成を目指す、知識及び技能や思考力、判断力、表現力等を問う問題が出題され,結果の分析をもとに指導改善のポイントが示される。

解答 4  解説 1:標本調査ではなく悉皆調査である。2:理科は3年に一度実施されている。令和5年度は中学校で英語を加えて3教科で実施された。3:小学校では英語は実施されず2教科で行われた。

2.次の文は「第4期教育振興基本計画」(令和5年6月閣議決定)の「Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策」の中で示された「目標1 確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」の一部である。空欄に当てはまる語句の組合せとして正しいものを選びなさい。

○全国学力・学習状況調査の実施・分析・活用

・本体調査の毎年度、悉皆での実施や、経年変化分析調査、保護者に対する調査の継続的な実施を通じ、データ貸与の取組も促進しながら、教育施策の成果や課題を把握・分析し、結果を活用することにより、教育施策の改善、及び教育指導の改善・充実を図る。また、( ア )の特性・利点を生かした出題等、調査の一層の質の向上と、教育データの収集・分析・利活用の充実による ( イ )の更なる推進を図るため、全国学力・学習状況調査の ( ア )化を進める。

1. ア:ICT   イ:EBPM

2. ア:CBT   イ:EBPM

3. ア:ICT   イ:DX

4. ア:CBT   イ:DX

解答 2  解説 CBTとは「Computer Based Testing」の略で「コンピュータ上で実施される試験」のことである。EBPMとは「Evidence Based Policy Making」の略で「データなど合理的根拠に基づく政策立案」のことである。

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