文科省が都道府県・市区町村教委を対象に行った調査によると、新型コロナ「第5波」を受けて、全体の15.4%の自治体が夏休みの延長や臨時休業を実施したとのことです。
2020年3~5月の一斉休校の時ほどではありませんが、教育活動には少なからず影響が出ていたことでしょう。今回は、この「臨時休業」に着目し、その制度的枠組みを見ていきたいと思います。
新聞報道などでは、「臨時休校」という言葉を使っているケースもありますが、法令上は「臨時休業」が正しい表記です。具体的に、学校保健安全法の第20条で次のように規定されています。
(臨時休業)
学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。
学校の全部を休業した場合は「休校」、一部を休業した場合は「学年閉鎖」「学級閉鎖」などと呼ばれますが、法令上は上記のように規定されています。
ここで注目したいのは、条文の主語が「学校の設置者」となっている点です。公立学校の場合、小学校と中学校は区市町村、高等学校と特別支援学校は都道府県が「設置者」ですので、臨時休業は各教育委員会が判断・決定することになります。
しかし、2020年3~5月の臨時休業は、全国規模で一斉に行われました。これは一体、どういうことなのでしょうか。
実を言うと、当時、安倍晋三首相が全国に発したのは臨時休業の「要請」にすぎず、強制力はありませんでした。実際、栃木県茂木町など一部の自治体は要請に応じず、学校を継続しました。全国的には99%(3月4日時点)の公立小中学校が臨時休業となりましたが、この数字は個々の教委が決定・判断した結果の積み上げにすぎません。さらに言えば、国に公立学校を臨時休業にする権限はないのです。
感染拡大を防止するための措置として、「臨時休業」のほかに「出席停止」があります。これは、特定の児童生徒を対象に行う措置で、学校保健安全法の第19条で次のように規定されています。
(出席停止)
第19条 校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる。
こちらは主語が「校長」で、小中高校生の場合は保護者に向けて、出席停止の指示を出すことになります。もちろん、校長は医療の専門家ではないので、実際の判断は学校医や養護教諭と相談しながら行われます。
なお、出席停止の期間については、例えばインフルエンザなら「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」といった具合に、疾病ごとの基準が学校保健安全法施行規則に規定されています。
上記、学校保健安全法第19条の「出席停止」は、筆記試験で非常によく問われる条文です。第20条の「臨時休業」も含め、制度的なアウトラインはしっかりと押さえておきたいところです。
また、面接試験では「感染症の予防にどう取り組むか」と問われる可能性があります。その場合は、国や教育委員会が示している指針・マニュアルなどに従いながら、手洗いの励行、マスク着用、教室の換気などに取り組んでいくことを伝えるとよいでしょう。
学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~