【実例で学ぶ論作文講座 (12)】大胆に攻めていこう

【実例で学ぶ論作文講座 (12)】大胆に攻めていこう
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明海大学外国語学部教授/教職課程センター副センター長 大池公紀
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 今回が最終回になります。冒頭に「ちょこっとコラム」を入れましたので、まずはこれを読んでください。

【ちょこっとコラム10 要は揺るぎない「強い文章」を創るべし】

 学校教育に関わるどのような現象・事象が起こっても、児童生徒を守る自分自身の姿勢は揺るがないことを読み手に伝えます。この人物を「採用したい」「少し不足しているところはあっても、学校経営実現のために頼りになるかも」との印象を植え付けることを心掛けましょう。

 要は「強い文章」を書くことが大事であり、これが本連載の中で私が伝えたい究極のメッセージです。

 さて、試験当日に向けて、あなたの手元には幾つの論作文が手元にありますでしょうか。5本でしょうか、3本でしょうか。また、あなたが「これは素晴らしい」と思えるモデル論作文は手に入りましたでしょうか。当日の手順に関しては、第9回で解説したように、 60分であれば構想10分、執筆45分、整形(誤字脱字の点検等)5分です。慌てず、騒がず、大胆に攻めていきましょう。

 次に、連載初期に述べた論作文の「構造5ポイント」をおさらいします。

 それは、

①論作文は、論・策・文
②論作文は、序論・本論・結論の3層構造と黄金比活用でパターン化
③序論は、テーマ出題の背景+その課題+解決の手だて
④本論は、論(課題解決の方策)+例示+具体的方策(+児童生徒の変容)
⑤結論は、課題解決へ姿勢+各自治体の教育公務員としての決意で完結

 ――です。

 この土台の上に記述上の技法を駆使していけば、大丈夫です。

 具体的な技法については、これまでの「ちょこっとコラム」に書いた通りで、それらをダイジェスト版にして以下にまとめました。

1.「、」は、一文に一箇所を目指すべし

 短文で多くて一度、長文・復文であれば2回。人はどうしてもbreathのところで「、」を打ちがちです。でも英語前置詞from,in,at,の前の所に「,」は入れません。「、」の多い文章は、読み手を疲れさせます。

2.「と思う」「と考える」は使わない

 「言い切る表現」を徹底します。「と思います」「と考えます」は、「考えているだけ」で行動に移さない」人物との印象を読み手に与えます。ここは「だ」「である」でしっかりと強く言い切ります。

3.資料は公的機関のWebサイトを活用してストックするべし

 PISA、TIMSS、学校基本調査、国を含めた都道府県の教育大綱、各教育委員会の教育指針などは、公的機関のWebサイトを活用してストックします。

4.ICT機器を駆使して活用できる資料をためていくべし

 公的機関の資料をストックするには、パソコンやスマホ、タブレット端末のアプリを活用します。そうして、ストックした資料をいつでもどこでも閲覧できるようにしておきます。自分の書いた論作文にペン機能で加筆訂正を入れてより良いものに作り替える、そんなことだってできます。

5.使役表現「~させる」をまぶすべし

 教室の場で「指導できる人物」というイメージを与える表現を所々に散りばめます。その工夫の一つが「~させる」という使役表現です。教育活動の具体的指導の場面で挿入をすると、文体が引き締まります。本論の具体策の中にずばりと入れ込みましょう。

6.管理職の好きな「協働」「報連相」を使うべし

 組織の一員として動ける人物であることを読み手に伝える上では、「協働」「報連相」の言葉が力を貸してくれます。最初の採点者(読み手)となる学校管理職は、いくら立派な実践を述べていても「組織的に動けない人物は不要」と考える傾向があります。その部分を良い方にアピールできれば、たとえ少し危うさを感じていても「採りたい」と思います。できれば後半部で、一度は使いましょう。

7.鉛筆で書く練習は今日からすべし

 試験までの限られた時間の中ですべきことはこれです。薄い鉛筆で書かれた文章は、思いがけない過誤を誘発します。会場には必ずHB以上の鉛筆を持ち込みましょう。大きく、丁寧な、でも大らかな性格を表した文字を書くことを心掛けてください。

8.くどさを捨てたCoolな文章を心掛けるべし

 「提示された設問を繰り返す」「分かり切った記述はしない」「一度使った言葉の繰り返しを避ける」といったことに気を配ることができれば理想的です。読み手に「かなりくどい性格なんだろうなあ」と思わせない文章を心掛けましょう。

9.読み手を意識し、文章であっても「演じる」べし

 面接試験と同じように、文を書く行為の中でも「力のある人物」「信頼に足る人物」「育てがいがある人物」「実践力がありそうな人物」を演じるがごとく書き、そうした人物であることを採点者に伝えましょう。自分はプレーヤー(演者)なのだと意識してください。

10.要は揺るぎない「強い文章」を創るべし

 自分自身の教師として揺るぎない姿勢を読み手に伝えます。そのためにも、「採用したい」との印象を植え付けられる「強い文章」を心掛けましょう。

 これで12回にわたる連載は終了しますが、皆さんが試験当日に全力を出し切って充実した顔で会場を後にできることを心から願っています。長い間ありがとうございました。

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