教員志望者に必須である教育課程に関する内容を分かりやすく学んでもらうための連載です。国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授の工藤文三氏に教育課程の基本的な内容、歴史をはじめ学ぶポイントを解説してもらいます。
学習指導要領第1章総則の冒頭には、各学校において教育基本法などの法令や学習指導要領に示すところに従って、適切な教育課程を編成することが示されている。総則の各章にも「教育課程の役割」「教育課程の編成」「教育課程の実施」という言葉が使われている。さらに、2017・18年の改訂では「社会に開かれた教育課程」という言葉が用いられた。
それでは「教育課程」とはどのような意味なのであろうか。総則の解説では次のように述べられている。
「学校において編成する教育課程については、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を児童の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した各学校の教育計画であると言うことができ、その際、学校の教育目標の設定、指導内容の組織及び授業時数の配当が教育課程の編成の基本的な要素になってくる」
ここから分かることは、教育課程とは学校で編成すること、その要素は教育目標、指導内容の組織、授業時数の配当という点である。例えば、小学校第1学年では、国語から特別活動の各教科等に内容を区分して組織し、それぞれに時数を配当している。さらに、第2~第6学年にわたって、児童の心身の発達を踏まえて指導内容を授業時数とともに配置編成している。これら第1学年から第6学年の教育課程を通じて、学校で設定する教育目標の実現を企図しているわけである。
教育課程の本来的な課題は、教育目標の実現のために、どのように内容を選択し、その内容をどのような考え方で区分し、学習の順序に応じて編成するかという点にある。また、必修や選択などの履修方法、履修と修得の関係も教育課程の重要な要素である。
ところで、学習指導要領にも用いられている指導計画や全体計画と教育課程とはどのように異なるのであろうか。指導計画とは、各教科等の1年間の指導計画や生徒指導の指導計画といったように、教育課程を構成する一部の内容の指導の計画を指す。国語の年間指導計画という使い方はあるが、国語の教育課程といった使い方はされない。一方、全体計画とは、道徳教育や食育、キャリア教育等のように各教科などを横断した教育を展開する際に用いられる。道徳教育は学校の教育活動全体を通じて行うとされており、このことを具体化するために全体計画が作成される。
教育課程は各学校で編成することを確認したが、教育課程は計画段階だけで指すのではない。計画が実施に移され各教科等の授業として進められることを教育課程の実施と呼ぶ。また、教育活動の結果、教育課程の目標が実現されたかどうか、改善すべき課題は何かなどを明らかにすることを教育課程の評価という。このように教育課程は計画↓実施↓評価↓改善のプロセスの中にあり、各学校はこのプロセスを通じて不断に教育の改善を目指した取り組みを進めている。このように各学校が教育課程に基づきながら、計画的に教育活動の質の向上を図ることを、学習指導要領の総則ではカリキュラム・マネジメントとして明記している。