今秋から来夏の教員採用試験に向けて本格的な勉強を進める人も少なくないだろう。2019年に連載した「教員採用試験の勉強の進め方」(全8回)から、要点をピックアップしてダイジェストとして再録する。
【論作文】
▽基本の形を身に付ける
各自治体の試験では、論作は600字、800字、1000字などで書くように字数が決められている。800字なら「はじめに=150字、柱(1)=250字、柱(2)=250字、まとめ=150字」、1000字なら「はじめに=200字、柱(1)=300字、柱(2)=300字、まとめ=200字」と基本の形を決めて、それに沿った執筆の練習をする。
▽論拠立てを明確にする
論作文の冒頭、テーマに対して論拠に当たる部分をどのように示すとよいか。例えば、いじめがテーマの場合には、「いじめはどの学校でも、どの学級でも起こり得るが、人として許されない行為であると認識している。文科省の問題行動調査によれば…」などとすれば、文科省の調査結果を論拠とすることができる。学力・学習状況調査、体力状況調査など学校教育に関する文科省やスポーツ庁の全国レベルの調査結果は論作文の基礎資料として活用できる。
▽押さえておくべき6つのテーマ
以下の6つのテーマについては、論作文を書けるように準備する。
・学力向上に関すること=学習指導、授業改善
・いじめ問題に関すること=いじめの認識、対策、担任としての指導
・学級経営に関すること=居場所づくり、支持的風土の学級づくり、向き合う・寄り添う学級づくり
・心の教育=教科道徳の進め方と評価、自己肯定感
・人間関係づくり=認め合い・関わり合い・支え合う人間関係づくり
・体力向上に関すること=一学級一運動、体力状況調査の結果
【志望動機】
▽実体験を基にした志望動機を
自治体によりスペースが異なるが、志望動機は必ず記入欄があるので、早めにしっかりと考えておく。
教育実習やボランティア活動で得られたこと、特に現在の児童生徒の実態から学んだこと、社会貢献活動体験が教職志望のきっかけとなったことなど、実体験を基にした志望動機が少しでも加えられるとよい。自分の目指す「教員像」を明確にして、自分の特性がいかに教職に向いているか、なども示したい。
【教育実習】
▽成果と課題をしっかりまとめる
教育実習は、教採試験の一つの柱として成果と課題をしっかりとまとめておく。「教育実習で得られた成果と課題について教えてください」とよく問われる。多くの場合、成果として「児童生徒との関わり方が実感した」「模擬授業を通して授業の実際が体験できた」「朝早くから遅くまで働いて頑張っていかないと授業や行事が進まないことが改めて分かった」「大変忙しいが、やる気があれば素晴らしい仕事になると思った」などが挙げられる。課題は、「もっと授業を上手にできるようになりたい」「授業がうまくいかなかった」「板書が思うように書けない」などが挙げられる。長時間、教材研究をしないと授業が成立しないという現実を初めて実感したというケースも少なくない。
【学習項目】
▽教員になるための必須学習項目は
採用試験での個人面接や場面指導では、受験者の人権感覚が問われる。いじめ、不登校、虐待などを含んでの人権課題である。他にも多くの人権課題がある。女性、子供、高齢者、障害者、外国人、HIV感染者、犯罪被害者・犯罪加害者、性同一性障害、LGBT、環境、個人情報など多くの人権課題があることを認識しておく。
▽考えておきたい項目は
主には次のような項目を考えておくとよい。
・学習指導について=「学級開きで大切なことは」「よい授業とは」「学力とは」
・生徒指導について=「いじめの認識」「いじめの対策」「不登校への対応」「落書きへの対応」
・学級経営について=「名前の呼び方」「座席の決め方」「居場所づくり」
・保護者対応について=「成績処理について」「授業について」「地域からの苦情」