【神谷正孝の教育時事2023(2)】「令和の日本型学校教育答申」の要点 個別最適な学びと協働的な学びの実現

【神谷正孝の教育時事2023(2)】「令和の日本型学校教育答申」の要点 個別最適な学びと協働的な学びの実現
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kei塾主任講師 神谷 正孝

 皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。前回、重要テーマの一つ目に挙げた「令和の日本型学校教育答申」について、要点をまとめていきたいと思います。

◇ ◇ ◇

令和の日本型学校教育とは

 この答申の正式名称は、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」です。その名の通り、目指すべき「令和の日本型学校教育」の姿とは、「個別最適な学びと、協働的な学びの実現」です。

 答申では新型コロナウイルス禍に触れながら、学校教育の役割について「①学習機会と学力の保障」「②全人的な発達・成長の保障」「③身体的、精神的な健康の保障(安全・安心につながることができる居場所・セーフティーネット)」の3つを挙げた上で、「令和の日本型学校教育」の姿を示しています。

 内容理解の鍵になるのが「新学習指導要領」「GIGAスクール構想」などのキーワードです。今後の教育の方向性に関わるキーワードを押さえることが、答申の理念や方向性の確かな理解につながります。

 新学習指導要領については、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善はもとより、平成以降の指導要領で重視されてきた「個に応じた指導」の視点が大切です。「個に応じた指導」とは、支援を要する子供への重点的な指導や個々の特性に応じた指導方法・教材などを提供・設定する「指導の個別化」と、各自の興味関心などに応じ、一人一人に応じた学習活動・学習課題に取り組む機会の提供という「学習の個性化」の2つの視点から捉えることができます。これを学習者の視点から捉えると「個別最適な学び」ということになります。

 この「個別最適な学び」が「孤立した学び」にならないようにするために、これまでの日本の学校教育で重視されてきた探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士・多様な他者と協働することが求められます。これが「協働的な学び」の意味するところです。

ICTの活用

 答申が目指す「個別最適な学びと、協働的な学びの実現」のためには、コンピューターや情報通信ネットワークの活用などの情報手段を活用することが求められます。GIGAスクール構想の実現により、学校内のネットワーク環境が整備され、1人1台端末の環境が実現すると、「個別最適な学び」や「協働的な学び」も進めやすくなります。学習履歴(スタディログ)の活用や、ICTを活用しながら協働的な学びを実現することにより、多様な他者とともに問題発見・解決に挑む資質・能力を育成することなどが期待されます。

 なお、答申では総論5において、「学校教育の質の向上に向けたICTの活用」や「ICTの活用に向けた教師の資質・能力の向上」に言及しています。

試験対策のポイント

 過去の出題を見ると、筆記試験では空欄補充形式が目立ち、次いで正誤問題形式が見受けられます。また、人物試験では面接での質問、論文や討論のテーマとして関連事項が問われることが多いようです。

 答申全文を確認し、全てを覚えきることは非現実的です。そこで提案するのは「木を見ず森を見る」ということです。全体像を捉えながら、個別具体的な事項については、優先順位をつけてみていくということです。文科省のウェブサイトには、答申の概要や現職向けの研修資料がアップされています。まずはそうしたもので全体像をつかむようにしましょう。

1.次の文は,「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して ~(略)~(答申)」(2021(令和3)年1月26日 中教審)の中の「はじめに」の一部を抜粋したものである。下の問いに答えなさい。

本答申は,第Ⅰ部総論と第Ⅱ部各論から成っている,総論においては,まず,社会の変化が加速度を増し複雑で予測困難となってきている中,子供たちの資質・能力を確実に育成する必要があり,そのためには,①新学習指導要領の着実な実施が重要であるとした。その上で,我が国の学校教育がこれまで果たしてきた役割やその成果を振り返りつつ,新型コロナウイルス感染症の感染拡大をはじめとする社会の急激な変化の中で再認識された学校の役割や課題を踏まえ, 2020年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」とし,その姿を「全ての子供たちの【②】を引き出す,【③】な学びと,【④】な学び」とした。ここでは, ICTの活用と少人数によるきめ細かな指導体制の整備により,「個に応じた指導」を学習者視点から整理した概念である「【③】な学び」と,これまでも「日本型学校教育」において重視されてきた,「【④】な学び」とを一体的に充実することを目指している。さらに,これを踏まえ,各学校段階における子供の学びの姿や教職員の姿,それを支える環境について,「こうあってほしい」という願いを込め,新学習指導要領に基づいて,一人一人の子供を主語にする学校教育の目指すべき姿を具体的に描いている。

(1)下線部①の「新学習指導要領」に関して述べた文として最も適切なものを,次のa~eの中から一つ選びなさい。

a 小学校では,平成30年度から全面実施されている。

b 中学校では,令和3年度から全面実施されている。

c 高等学校では,令和6年度から年次進行で実施される予定である。

d 「何を学ぶか」だけでなく,「どのように学ぶか」も重視するねらいから「主体的・探究的で深い学び」の実現に向けた授業改善が必要とされている。

e 教育課程に基づく教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るため,各校における組織マネジメントの確立に努めるとされている。

(2)文中の【②】~【④】に当てはまる語句を,それぞれ下のa~eの中から一つずつ選びなさい。なお,同じ番号には,同じ語句が入るものとする。

②の語群 a 興味・関心  b 学力  c 意欲  d 個性  e 可能性

③の語群 a 自発的  b 健やか  c 個別最適  d 探究的  e 十分

④の語群 a 系統的  b 対話的  c 体験的  d 協働的  e 主体的

解答 

(1)b (2)②:e ③:c ④:d 

【解説】

(1)平成29・30年版の学習指導要領は,小学校では令和2年度より,中学校では令和3年度よりそれぞれ全面実施され,高等学校では令和4年度より学年進行で実施。d:「主体的・対話的で深い学び」である。e:「カリキュラム・マネジメント」である。

2.次の文は,「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」(令和3年1月 中央教育審議会)の『5.令和の日本型学校教育』の構築に向けたICTの活用に関する基本的な考え方」から抜粋したものである。あとの各問いに答えなさい。

ICTが必要不可欠なツールであるということは,社会構造の変化に対応した教育の質の向上という文脈に位置付けられる。すなわち,子供たちの多様化が進む中で,個別最適な学びを実現する必要があること,情報化が加速度的に進むSociety5.0時代に向けて,情報活用能力など( 1 )の基盤となる資質・能力を育む必要があること,少子高齢化,人口減少という我が国の人口構造の変化の中で,地理的要因や地域事情にかかわらず学校教育の質を保障すること,災害や感染症等の発生などの緊急時にも( 2 )の継続を可能とすること,教師の長時間勤務を解消し学校の( 3 )を実現することなど,これら全ての課題に対し, ICTの活用は極めて大きな役割を果たし得るものである。

(1) ( 1 ),( 2 )に入る語句の組合せを次の(ア)~(エ)から1つ選び,その記号で答えよ。

1 2

(ア) 成長 教育活動

(イ) 学習 教育活動

(ウ) 成長 教育課程

(エ) 学習 教育課程

(2)( 3 )に入る語句を次のア~エから1つ選び,その記号で答えよ。

ア 授業改善  イ 教育改革  ウ 意識改革  エ 働き方改革

解答 (1)イ (2)エ

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