【他と差を付ける論作文(2)】読み手が引き込むには 教職への思いを表現したい

【他と差を付ける論作文(2)】読み手が引き込むには 教職への思いを表現したい
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 教職へのやる気と熱意を表現し、他と差を付ける論作文にするにはどうしたらよいか、そのポイントを紹介する第2回目は、読み手を引き込む工夫を紹介する。

形式は考慮しつつも内容は個性的に

 論作文を書くに当たって、よく「『はじめに』は、何行くらいがいいのでしょうか」「やはり、『はじめに』があって、次に本論があって、最後にまとめで締めくくるということがいいのでしょうか」「具体的な事例は3つがいいのでしょうか」といった、やや形式的な面について聞かれることがある。

 「内容が勝負。形式にあまりこだわらなくてもよい」というのが、一般的な回答になる。

 論作文では、論述者が課題に対してどのような考えを持っているのか、また、その課題の解決に向けてどのような策を講じようとしているか、どのような具体的な事例を持っているのか、さらには教職への強い意欲を持っているか、などということに採点官の関心は向きがちである。

 一般的に形式を踏まえているかどうかということは、採点の観点にはなっていないことが多い。従って「あなたの考えを述べなさい。また、教師としてどのように取り組むか具体的に述べよ」といった内容の場合ならば、考えと具体策を論述することが何よりも大切なのである。順序をどうするか、何行ずつ書くかなどは二の次と考えてよいだろう。

 例えば、形式をしっかりと踏まえ、内容も適切に書かれていればそれは標準点にはなるが、それ以上にはならない。合格の論文になるためには、標準点を超えることがポイントである。大切なのは、読み手が引き込まれるような内容であり、論述なのである。

 そのためには、取り組みや実践を自分なりに多く持っていることが求められる。学生の場合、教育実習以外、具体的な取り組みは少ないと思われるが、普段の学校生活やボランティア、アルバイト経験などをいかに教職に生かせるか、という観点で考えればよい。

 さらに、それを的確にしかも簡潔に表現できるということが重要だ。課題をしっかりと受け止め、自分のこれまでの取り組みや実践、多様な経験を生かしながら教師になったらどのように取り組む所存であるかを論述し、これに教師への強い思いを織り込んでいくことが大切となる。そこには、形式をどう踏まえるかということ以上に重要な要素が含まれている。

一貫した表現になっているか

 採点官は、論文を読んでいて「この受験者はしっかりしているな。きっといい教師になるだろうな」という感想を持てる論作文に出合うことがあるという。

 どのような論作文かというと、代表的なものは、はじめからまとめまで一貫した流れで表現されているものである。逆にはじめの主張が途中で消えてしまい、まとめでははじめの考えと異なった主張になってしまっている論作文にお目に掛かることが少なくないらしい。

 例えば、学力向上を述べていたのに、最後の部分では表現力の育成になってしまった、というものである。おそらく論を展開していくうちに、いろいろ重要な事項が浮かんできて、多様な内容に触れてしまい、その結果、はじめと終わりが異なってしまう、ずれてしまう、という展開になったと考えられる。

 これを防ぐために大切なのは、課題を読んだときにすぐに書き始めるのではなく、まずは論作文の構想を練ることである。どのような内容で書き始めるか、主たる論述ではどのような具体的な活動や体験を、どのような主張とともに表現していくか、まとめではどのように自分の意思や意欲、教職への熱い思いを伝えるか、などという点について、メモするなどしてしっかりと押さえておくことである。

 日頃から論作文の柱立てやまとめの表現などについては、練習を積み重ねて書き慣れておくとよいだろう。

 また、一つの文章で主語と述語が合っていない、ずれてしまっているものもよく目にする。「私は、…必要である」「学力は…求めている」のように、主述の関係が乱れているケースである。論述しているうちに、主語を見失ってしまったものと思われる。見直しの時に内容的なものの見直しとともにこうした文章表現にチェックをしていくことが大切である。首尾一貫した文章表現ができるということは、教員の代表的な資質の一つである。

 論述する際の留意点をまとめたので、参考にしてもらいたい。

  1. 教職の立場から述べる(学級担任、教科担任、部活動の顧問など)。
  2. 論作文としての構成、時間配分を考える(余白を使ってメモするとよい)。
  3. 文字は力強く丁寧に書き、句読点は適切に使用する(読点は息継ぎ、読みやすくするもの)。
  4. 序論(書き出し)と結論(まとめ)を照応させて述べる(下書き、大幅な書き直しは時間的に無理である)。
  5. 論旨の焦点化、一貫性に留意して述べる(コンパクトに狙いや根拠を明確に述べる)。
  6. 主語と述語の関係を明確にし、長文は避ける(重文、複文には気を付ける)。
  7. 事例を挙げ、具体的に考えを述べる(分かりやすく、説得力があるものにする)。
  8. 自分の見解を表明し、個性的な論文にする(自分の考え、思いを明確にまとめる)。
  9. 不適切な用語は使用しない(父母会→保護者会など)。
  10. 説明不足で独り合点な内容にしない(読み手に分かる内容にする)。
  11. 専門用語はできるだけ使わないようにする。使う場合は、簡単な説明を加えるようにする。 
熱意が伝わる内容や表現になっているか

 採点官が論作文を読んで、ぐっと引き込まれる論述に共通して言えることは、子供たちへの思いや教育に対する受験者の熱い思いが語られているということである。その思いが採点官にしっかりと伝えられることが大事である。きれいに流れている文章やまとまりのある文章という側面も大切なことではあるが、より大切なのは教職への熱い思いがしっかりと表現されている論作文になっているということである。

 教職への強い思いを表現するには、基盤として「教員になり、子供たちと一緒に学んでいき、次代を担う人材づくりに貢献したい」という思いをしっかりと持つことである。教採試験を受験する前に、今一度、自分の心に語り掛け、本当に教職を目指す意志が強いか否かを確かめるとよいだろう。その上にたって論述の内容や表現を工夫することである。教職への思いを表現するためには、論述の技術を身に付けるとともに、内面的な心の在り方が重要なポイントとなってくる。

 執筆の際、一つ留意したいことは、文末の表現である。「…と思われる」「…であると考えられる」といった文末の表現では、思いは強く伝わってこない。客観的な感じがしてしまう。

 思いはしっかりと伝えよう。「教員になり、…に取り組みたいと思っている」ではなく、「教員になり、…に取り組みたい」のように思いをしっかりと表現し、自信を持って思いを伝えていくことが大切である。

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