【神谷正孝の教育時事2023(4)】問題行動・不登校調査(2)不登校の現状

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kei塾主任講師 神谷 正孝

 皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷です。前回に引き続き、昨年10月27日に公表された文科省「令和3年度(2021年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の要点をまとめていきたいと思います。

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不登校の現状・対応

 不登校は、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した人のうち、病気や経済的な理由による人を除いたもの」と定義されます。21年度の小・中学校における不登校児童生徒数は、24万4940人(前年度19万6127人)であり、前年度から約25%増加し過去最多となりました。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合も2・6%と前年度2・0%を大きく上回りました。13年度より9年連続で増加しており、直近5年間では、それまで横ばいで推移してきた小学校の不登校児童数が年々増えてきています。

 文科省は不登校増加の背景について次のように考察しています。

 「児童生徒の休養の必要性を明示した『義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律』の趣旨の浸透の側面も考えられるが、生活環境の変化により生活リズムが乱れやすい状況や、学校生活においてさまざまな制限がある中で交友関係を築くことなど、登校する意欲が湧きにくい状況にあったことなども背景として考えられる(児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要より)」

 また、年間90日以上欠席した不登校児童生徒は、小学校で44・2%、中学校で60・4%、小中合計で55%と、不登校の半数以上が長期にわたり不登校であるということが分かります。さらに出席日数が1~10日の人が小中合計で7・8%、出席日数0日の人は小中合計で3・5%となっています。

 21年度の学年別に見た不登校児童生徒数は、中学1年生で大きく増加し、中学3年生で最多となりました(昨年度は中学2年生が最多)。指導の結果登校できるようになった児童生徒は全体で27・8%(小学校27・1%、中学校28・1%)で、前年から不登校が継続している割合は、小学校約42%、中学校約51%となっています。

不登校児童生徒への支援

 不登校は、多様な要因・背景により結果として不登校になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断しないことが必要です。そのため、不登校児童生徒への支援は、「将来、児童生徒が精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるような、社会的自立を果たすこと」が目標となります。学校に登校するという結果のみを目標とするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的自立を目指せるように支援を行うことが求められます。

生徒指導提要(22年12月改訂)

 22年12月、文科省ホームページ上で改訂版の「生徒指導提要」が公開されました。その中で示された、不登校児童生徒への重層的支援構造(第10章3節)についても確認しておきましょう。発達支持的生徒指導として、魅力ある学校づくり・学級づくりや分かりやすい授業の工夫などが示されています。また、不登校の要因・背景が多様であることから、適切にアセスメントを行い支援の目標や方針を定めること、多職種の専門家や関係機関とも連携・協働しながら、組織的に個々の児童生徒の状況に応じた具体的な支援を展開していくことが示されています。

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