【他と差を付ける論作文(5)】採点官の視点で考える 的確な論述の在り方は

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 教職へのやる気と熱意を表現し、他と差を付ける論作文にするにはどうしたらよいか、そのポイントを紹介する5回目。論述する際の具体的な留意点と情報収集について紹介する。

課題を受け、構想を練る

 採用試験を受け、座席に腰掛け、課題の書かれた用紙や論述するための用紙が配られると緊張感は最高に達する。すると、緊張から頭が動いてくれないという事態が起きてしまう。

 また、書き始めてみると、事例は違う方がいいか、論述の根拠が少しあいまいではないか、書き出しがうまく表現できていない、少し冗長な論述になり書き過ぎてしまった、などとどうしても論述の不具合が気になってくる。緊張がほぐれないうちに書き始めてしまうと、往々にしてこうした現象に悩まされることが多い。

 そこで、しっかりとした論作文に仕上げるために、まず課題を読み終えたら、しばらくは論述に取り掛からずに、論文の全体像を構想することである。論述の中心にはどの事例で勝負するか、今一つの実践には何を生かして論述するか、どのような教育課題を背景にして述べるか、さらに、情報として持っているものはどこで差し込むか、というように、論作文の中核をなすものについて構想し、メモを取り、論述に備えることが説得力のある論文にしていくために必要である。

 論作文の中心が構想できたならば、次は、書き出しで何をアピールするかに思いを巡らせていくとよい。よく論述ははじめの3行で決まるとも言われるくらい大切な部分だ。読み手の心にどのように入っていくか十分に吟味したいところである。はじめが決まれば、まとめの部分も固まってくる。自分の教師への思いをどのように伝えるか、もしくは自分の思いをどうまとめていくかにこだわっていきたい。

 論作文の課題を前に、しばし沈思黙考し、自分の論文の全体をしっかりと固めることである。換言すれば、この時間は、自分が目指す教師への思いを、課題を通してどのように読み手に伝えていくかを考える時間である。この時間を大切にしたい。

情報を収集し、自分なりに考察する

 例えば、昨年12月に文科省から発表された「令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」の中では、体力合計点について「令和元年度調査から連続して小・中学校の男女ともに低下した」とまとめるとともに、低下の主な要因としては、「(1)1週間の総運動時間が420分以上の児童生徒の割合は、増加しているものの、以前の水準には至っていないこと(2)肥満である児童生徒の増加(3)朝食欠食、睡眠不足、スクリーンタイム(平日1日当たりのテレビ、スマートフォン、ゲーム機などによる映像の視聴時間)増加などの生活習慣の変化――のほか、新型コロナウイルス感染症の影響により、マスク着用中の激しい運動の自粛なども考えられる」といったような調査結果から読み取れる内容の、文科省による考察も調査結果の内容とともに示されている。

 こうした情報に関しては、知っているかどうかということが教職を志す者に対してはまず問われるのである。調査結果の細かい数字はともかくとして、全体的な傾向や課題などについてはしっかりと理解しておくことが必要である。とりわけ、文科省から出される調査結果や通達、通知などについては、全国的に関わる内容となっている場合が多いので、マスコミからの情報提供やインターネットによる情報収集などを通して、情報を適切に把握しておくことが大切である。

 各種メディアでは、こうした調査結果や通達、通知などが出されると、全てではないがそのメディアなりの考えをもって(論評を加えて)情報が提供されてくる。本紙においても、こうした情報については内容を記載したり、専門家などの論評を加えたりしながら読者に提供され、分かりやすい解説なども加えられている場合も多い。

 情報について、内容を理解するとともに、識者はどうそれを捉えているか、またどのような課題や問題、疑問が持たれているか、という幅広い情報の収集と理解が重要である。小論文対策ばかりではなく、面接における対策にもなってくるのである。

 学校教育に関する種々の情報を収集し、それらを理解することは教職を志す者としては基本的な姿勢である。

 さらに大切なことは、例えば、情報が学力や体力調査の結果を受けてということならば、得た情報に対して、自分はどう受け止めるか、どう考えるか、この結果をどう子供たちとの関わりの中で生かしていくか、課題解決に向けてどのような努力するかといったことを自分なりにまとめておくことが必要である。また、情報が通達や通知であれば、内容の理解とともに、具体的にはどのようなことか、もしくは具体的に各学校ではどのような取り組みをしているかについての資料収集も必要である。

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