【教育課程を学ぼう(10)】教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

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 国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授 工藤文三
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教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成

 現行学習指導要領の特色の1つに、教科等横断的な視点からの教育課程の編成を掲げたことが挙げられる。これまで「横断的」の語は、総合的な学習の時間において「教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習」や「横断的・総合的な課題」として用いられてきた。今回は、総合的な学習の時間ではなく、教育課程の編成に際して教科等横断的視点に立った資質・能力の育成を図ることを求めている。この教科等横断的な視点に立った資質・能力として次の2つが示された。

 1つは、学習の基盤となる資質・能力として、「言語能力、情報活用の能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等」である。ここで、「学習の基盤となる資質・能力」としていることがまず重要である。解説総則編には、「言語能力を構成する資質・能力」の知識・技能として、「言葉の働きや役割に関する理解、言葉の特徴やきまりに関する理解と使い分け」などが示されている。情報活用の能力に関する知識・技能として「情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法」などが示されている。

 2つは「豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」である。この「現代的な諸課題」については、これまでも環境教育や消費者教育、国際理解教育、伝統と文化、食や健康、安全に関する教育などとして実施されてきたものであり、今回教育課程の編成に際して明示されたことになる。教科等横断的な内容構成の例として、学習指導要領解説総則編の付録6に、13の例が示されている。

どのように編成するのか

 1つ目の言語能力、情報活用の能力、問題発見・解決能力の育成については、各教科などにこれらの能力の意義とその育成方法を整理し、それらの育成をどのように指導計画に位置付けていくか検討することが必要である。特に各教科などの言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力とはどのような能力なのか、どの学習場面でどのように育成されるのかを明確にしておくことが大切と考える。ただ、言語能力育成の中核を担うのは国語科であることはいうまでもない。

 2つ目の「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」の育成については、児童生徒および地域の実態などを踏まえて、学校としての課題を設定し、教育課程に具体化していく。例えば、郷土や地域、防災と安全、健康と食、消費者教育、主権者教育などの横断的な課題を設定し、各教科などの関連する学習事項を洗い出し、同じ学年内の横の関係や学年間の縦の系統も見通しながら具体化していく。また、取り扱う課題によっては、総合的な学習の時間における学習を軸にすることも考えられる。

 以上の1つ目、2つ目のいずれも、各教科など、学年のどこでどのように学ぶのかを示す全体計画を作成することも有効である。なお、食に関する指導については、学校給食法においてその全体計画の作成が規定されていることも踏まえておきたい。

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