【こども哲学(6)】小学校における取り組み

【こども哲学(6)】小学校における取り組み
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「子どものための哲学」(Philosophy for Children : P4C)は、1970年代に米国の哲学者マシュー・リップマンが始めた対話型の哲学教育だ。リップマンは「子どものための哲学推進研究所」(IAPC)を設立し、数々の教材やプログラムを創案した。その後、IAPCで学んだ者らが中心となり、P4Cは世界各国で実践されるようになった。日本ではここ10年ほどで注目が高まり、授業などに取り入れる小学校が増えている。教員個人が教科学習の中で行ったり、学校・学年規模で「総合的な学習の時間」を充てたりと、取り入れ方はさまざまだ。進行も、各校の教員がすることもあれば、アーダコーダなど外部講師が務める場合もある。アーダコーダは、2019年度より横須賀学院小学校にて月1回、1・2年生と一緒に特別授業「こども哲学」を実施している。当日は、アーダコーダのメンバーが学校に赴き、子どもたちと一緒に哲学をする。ある日の様子を紹介しよう。第4回目となるこの日のテーマは「ふしぎ」。授業は、校内や、学校の近くの公園を探検するところから始まった。自然の中にある不思議から「みんなが答えることのできない問い」を集めることがミッションだ。その後教室に戻り、それぞれが感じた不思議を共有する。さらに、お互いの問いについて一緒に考える、という流れだ。また別の日には、お互いに質問し合う質問ゲームを通じて互いの考えを聞き、その上で問いを考えるということにチャレンジした。基本はみんなで一緒に問い、話し、考えること。こどもの哲学はシンプルだ。シンプルなだけにアレンジは無限大とも言える。教材を用いる(絵本や映像など教材も多様)こともあれば、教室を飛び出すこともある。子どもたちからは「もっと話したかった」「他の問いについても考えたかった」と感想が聞かれた。私たちが学校の中でこどもの哲学を行う上で、特に重要視しているのは下記の2点だ。

  • 子どもたちの「不思議に思う気持ち」や「問い」を大切にする
  • 子どもたちが安心して参加できる場を育てる

こどもの哲学の出発点は、子どもたちの「不思議に思う気持ち」や「問い」だ。そして、子どもが伸び伸びと考え、「不思議に思う気持ち」や「問い」を持ち、自分の意見を述べることは、何を言ってもばかにされない、怒られない、真摯(しんし)に受け止めてもらえるといった場への信頼感があって初めて可能になる(もちろん大人も)。その意味で、信頼できる場、安心して参加できる場を共に育んでいくこと自体、こどもの哲学を学校で行う意義の一つと言えるだろう。

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