【働き方改革のキーパーソン(6)】業務移行にはシナジーが大切

【働き方改革のキーパーソン(6)】業務移行にはシナジーが大切
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 前回、業務移行はその効果を見越してすべきであり、移行する業務は事務職員が担当した方がベストな結果となるものに限定したいと述べた。教員の雑務排除をインセンティブにする業務移行には反対である。「ベストな結果」については次回以降で詳しく述べるとして、今回は「シナジー」をキーワードに、事務職員の組織化を考えたい。

 まずは、働き方改革答申にも出てきた「共同学校事務室」の可能性を探っていこう。これに似たものに「共同実施」という施策があり、提案されて20年近くがたつ。ごく簡単に説明すると、両者共、事務職員が共同で仕事をする組織であり、拠点校参集型とセンター常駐型がある。そして共同実施の進化系として、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に「共同学校事務室」が規定された。詳細は条文を参照してほしい(第47条の5)。

 具体的には、事務職員が組織内全ての学校に兼務発令されるなどして、所属校だけではなく、複数校の仕事をするイメージである。その組織には室長がいて、ヒエラルキーが存在する。制度そのものに対する評価は分かれるところであるが、わたしは事務職員が共同で仕事を担うことで、得手不得手をカバーできたり、仕事に対する意識の違いを平準化できたりするメリットがあると考えている。

 例えば、教員の初任者研修を共同で実施できる。人に伝えることが得意な人と、不得意な人がいるが、単数配置であるが故に、得手不得手にかかわらず、誰もが経験せざるを得ない(「やらない」という選択肢を避ける効果もある)。実際に、わたしの共同実施組織では、組織内12校の初任者教員を全員集めて研修を実施した。初任者には知識を授けることができ、事務職員自身も研修方法を学べるという、シナジーが生まれている。

 他にも、体力テストや学校評価のデータを共同で処理している事例がある。各校の担当者は業務負担を減らすことができ、事務職員自身も教育活動を支えているという意識が高まる。事務職員の多忙化に気を付けさえすれば、ここでもシナジーは発生する。

 また、学校行事を組織内で共有することにより、小中連携はもちろん、保護者や地域も単一校の情報にとどまらず、近隣校の情報まで共有できる。このように、学校事務の共同化だけでもこれだけの成果を上げている。他職種も試す価値はあると思う。

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