学校が休校になり、オンラインを活用して学校と家庭をつなぐ試みが数多く実践されるようになりました。ある英国の有名なトレーナーが、「P.E. with JOE」と題して家の中でも活動ができるような動きを紹介し、それを子供たちが真似しながら運動する動画コンテンツをYouTubeで配信しました。この第1回配信動画の再生数が、なんと640万回を超えたということで話題になりました。
運動不足解消を目指して、動画で活動やダンスを配信し、子供たちに運動を促す取り組みは大変多く実施されています。そして、このような取り組みを「体育」と称して実施している動画がいかに多いかに驚かされます。このような事実を目にして、一般の人々だけでなく教師にとっても、体育は「身体活動をさせる時間である」と認識されているのではないかと思えました。
本来、このようなときだからこそ、体育で学習した成果を発揮し、運動との関わり方を創意工夫して実践できるようにすべきではないかと思います。「運動したいという欲求」を自宅の中、あるいは自宅の周辺で「いま―ここ」の状況の中で、自らの工夫した運動実践を発揮することができるならば、体育の学習成果は高かったと言えるのではないかと思うのです。そういう意味からすれば、体育の学びで「身体を動かして楽しい」「仲間と関わって楽しい」という経験はできていたとしても、自らが体を動かしたいという思いを具体的に実現していくための、技能や思考判断、態度を育むことはできていなかったのではないかと思わざるを得ません。
結局、コロナ禍で外出自粛を余儀なくされ、「人がいない」「場所がない」「モノがない」ので運動ができないと結論付けてしまい、体育の学習内容の視点が薄れてしまったのではないかと思います。しかし、これまでの体育の学びを大切にした「家庭での運動との関わり」という視点があったなら、家庭における身体活動促進の学びのデザインは他にあったのではないでしょうか。改めて、体育を通して学ぶべきことはなんだったのかと思わされる機会だったと言えます。
3密を避けて運動環境を生み出すという上で、オンラインは、まさに救いの神だったとも言えます。その特性を十分に理解し、体づくりにつなげることができれば、大きな武器になると思います。一方で、対面でできないからやむを得ずオンラインで代用し、活動させるようなものならば、十分な成果を得ることはできないと思います。次回以降、Withコロナ時代のより良い体づくり実践を目指し、その鍵をICTの利活用に求め、「新しい生活様式」における体育・身体活動の在り方を考えていきます。