今回は架空の中学校を舞台に、パブリック・リレーションズの実践例を紹介したいと思います。登場人物は学年主任のA先生と、その学年の担任教師B先生です。B先生はとても生徒思いで一生懸命なのですが、ある日A先生に声を掛けられました。
「B先生の教室はいつもきれいで素晴らしいね。生徒たちへの指導が行き届いているよね」
「毎日放課後、私がやってるんです」
「さすがB先生。毎日しんどくない?」
「生徒だけではちゃんと掃除できないんで。生徒のためを思えば仕方ないです」
「え?この掃除って生徒のためにやってるの?」
「もちろん生徒のためです!」
「そうかなぁ。それ、B先生、自分のためにやってない?」
「え?」
「生徒たちに聞いてみたの?」
「いえ、聞いてはいません…。教室がきれいな方が、生徒が喜ぶと思っていましたが、生徒に喜ばれたい、良い先生って思われたいって思っていたのかもしれません」
「多くの生徒はB先生の一生懸命さにとても好感を持っているみたい。でも、B先生のクラスの生徒は、来年の担任がB先生じゃなくなったらどうなるんだろう。『新しい先生は細かいところまで掃除させるから嫌だな〜』ってならないかな。これ、誰か幸せになってる?」
「本当だ。誰も幸せにならないですね。でも教室が汚くていいんですか?」
「誰が嫌がるの?」
「そうか。私じゃなくて、生徒自身がそれを嫌がるかどうかですね。それも生徒に聞いてみないといけないんですね」
「そう!B先生と生徒たちで、教室美化の目的やその手段について、フラットに話し合ってみるといいよ。そのとき、誰一人として不幸せな思いをさせないことを忘れないでね」
「分かりました。誰一人として不幸にしない。大切ですね。今度、総合的な学習の時間で話し合ってみます。A先生が担任をやっていた頃って、どうやって目的や手段を話し合っていたんですか?何か良いやり方、ありますか?」
「それはね、パブリック・リレーションズ(PR)という手法があって…」
どうやらこの後、B先生はPRの手法を手に入れたようです。私がアドバイザーをしている日本パブリックリレーションズ研究所では、中高生向けのPR教材『PR for School』の認定講師講座を年に一度行っています。次回は12月末を予定しています。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
※12月末に予定されていた認定講師講座は、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みて、延期となりました。再開については決まり次第、ウェブサイトでお知らせします。