2020年8月に設置した「学校内民主主義を考える検討会議」で、委員の高校生や大学生に問題提起してもらう中、全員から共通して挙げられたのが「無力感」と「継続の難しさ」です。
「何かを学校側に提案しても、理由もなく却下されることが多い」
「先生に言われた以外のことをやろうとすると、評定、進路指導を持ち出して封じようとしてくる」
「校則も明文化されておらず、学年や先生ごとに対応が異なる」
「先生が生徒会則を無視して介入してくる」
「生徒も学年によって意識の差が大きく、自分たちの代で学校側と生徒側で話す場をつくっても、継続しない」
日本若者協議会が2020年11月に実施したアンケート(生徒回答数779)でも、同様の声が多数聞かれました。
「児童生徒が声を上げて学校が変わると思いますか?」という問いに対しては、約70%の児童生徒が「(どちらかというと)そう思わない」と回答しています。
しかも「実際に学校に陳情したことがあり、受け入れる旨の回答をもらったが、後にほとんど対処してもらえていなかったことが分かった」「(生徒会の)候補者が何度も校則を変えると言ってきたけど変わったことはない」など、これまで学校の中で声を上げてきた経験から、こうした感覚に陥っていました。
学校教育を通じて社会に対する参加意欲が増すどころか、むしろマイナスの影響を与えてしまっていたのです。
結果的に、生徒たちは学習性無力感(不快だと分かっている状況でも「自分は無力なんだ」と学習してしまい、抵抗や回避をしなくなってしまう)に陥り、声を上げなくなってしまっています。さらには、無力感がエスカレートして、教職員(大人)に反感を覚えている生徒も少なくありません。
もちろん、全ての教員が無下に対応しているわけではありませんが、教員や学校によって大きな差があるのも事実です。
「児童生徒が要望・提案を行った時、教職員はどのような対応をしますか?」という質問に対しては、半数の生徒が「(どちらかというと)親身に対応してくれない」と回答していました。
こうした調査結果を踏まえて、改めて「学校内民主主義」を実現する必要性を認識するとともに、きちんとルール化していくこと、教員側にもノウハウを共有するために研修やガイドラインの作成をしていくことが大切だと考えています。
そして、生徒と教員が「対立構図」にならないよう、専門家によるファシリテートを導入していくべきだと考えるようになりました。
なお、提言の中に、「調停者制度(メディエーター)」の導入を入れています。これは筆者がドイツへ視察に行った際、小中高合同の生徒会で建設的な議論・意思決定をサポートしていた専門家を参考にしています。