【OECD Education2030(9)】OECDのカリキュラム報告書と日本への示唆(後編)

【OECD Education2030(9)】OECDのカリキュラム報告書と日本への示唆(後編)
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今回は、「OECD未来の教育とスキル2030」(以下、E2030)プロジェクトが公表した報告書「カリキュラム・オーバーロード:未来への道」の内容を簡単にご紹介します。

社会の複雑化に伴い、カリキュラムはさまざまな学習内容を取り入れて、その変化に適応する必要性に迫られています。例えば、社会の情報化の進展に伴い、コンピューターの仕組みを知り、主体的に活用できることの重要性が増したため、日本の学校で小学校段階からプログラミング的思考を育むための教育が新たに導入されたのもその一例です。

しかし、国際的には過去10年間で授業時間はそれほど変わっていません。そのため、児童生徒は「薄く広く」学ぶことになり、より「深く」学ぶための時間がなく、教師は限られた時間内に学習内容を押し込まざるを得ない状況が生じています。日本でも「主体的・対話的で深い学び」のためには時間が必要というのが、先生方の実感ではないでしょうか。

OECDでも、より深い学びのためには時間が必要であると考えています。大切なことは、学習時間が長いからといって、必ずしも生徒の効果的な学習成果に結び付くとは限らないことを認識することです。このため、学びの質(量ではなく)や、子供たちのウェルビーイング(Well―being)に焦点を当てることの重要性を認識する国や学校が増えてきています。カリキュラムの過剰な負担という課題に取り組む際に各国が得た教訓として、学習領域の幅と知識内容の深さとの間で適切なバランスを保つこと、カリキュラムの主要な設計原則として、焦点化、負荷、一貫性を一体的に用いることなどが掲げられています。

日本でも、教育関係者の間で「カリキュラム・オーバーロード」は課題だと認識されていると思います。学習指導要領の歴史を振り返ると、直近2回の全面改訂はいずれも学習内容を増加させる方向での改訂となりました。しかし、今後永遠に学習内容を増加させ続けることは不可能です。そのため、限られた授業時間の中で、子供たちがより良い未来を創っていくために、何を学び、どのような力を身に付けることが真に重要なのかを考え、優先順位をつける必要があります。また、学校の働き方改革の観点からも、「カリキュラム・オーバーロード」は避けなければなりません。教師が生き生きと子供たちに教えることができなければ、持続可能な学校制度とは言えないからです。〈参考文献〉OECD 「Curriculum Overload A Way Forward」(第9回担当=鈴木文孝)

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