初心に帰り、ICT導入の意味を考えていきたいと思います。私がMicrosoft Teamsを学校改革の中心に置いた理由は、これまで散々話してきた「伝達の効率化」や「働き方改革」のためではありません。これからの時代に必要な価値創造を促進する道具としてです。これは、教育の本質、先生の働き方、世の中の動きが一致する部分だと考えています。
多くの仕事がAIをはじめとした機械に代替される時代になり、今までの「決められたことをミスなく丁寧に」が美徳という世の中の価値観が崩れてきました。教育界でも学習指導要領が変わり、先生たちは体験したことのない学びを新たに創り出していくことが求められています。ICTを使った「双方向的な学び」がうたわれていますが、この言葉の使われ方もさまざまだと思います。ただの伝達を複数人で行っている状態を指す場合には違和感を覚えます。授業におけるある種の予定調和的な活動を共有機能によって効率化することもそうです。本当に必要になるのは異なる価値観がぶつかり合いながらも前に進もうとする「対話」であり、分かることを目的とした機械的な「伝達」ではありません。Teams本来の使い方は、この対話的なコミュニケーションにおいてであり、実現にはそれ相応の「お作法」があると思っています。
メールと比較してみましょう。従来の価値観の中で長年使われてきたメールでは、読み手に解釈の余地を与えず、いかに分かりやすく伝えるかを正解とします。ミスがないように添削をし、長めの精巧な文章を送ることが求められます。Teamsもこうしたメールの使い方を踏襲する形で使用されることが多いのですが、「決められたことをミスなく丁寧に」の時代に活躍してきたメールとは異なる道具なので、送る内容も文体も当然変わってきます。
私は研修の度にTeamsの作られた背景、そしてマナー講師のようにチャットマナーたるものを伝え続けています。「短く、素早く」「可能な限り表情を見せる」「問いが生まれるような隙を設ける」など、いずれも対話のための道具だという前提があればふに落ちる内容だと思います。
こうした使い方に至るまでには、一筋縄ではいかないかもしれません。前任校でも、導入時にチャットマナーを説明するだけでは今までの習慣が変わりませんでした。管理職に何度も「サクラ」になってもらい、誰もが驚くような軽めでユニークな投稿をしてもらったことで、徐々に浸透していきました。
こうしてチャットマナーにのっとった形で使われることで「問い」「疑問」、そして「分からない」を未完成な状態で共有していく文化に変化し、対話の素地ができます。
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