今回からアンガーマネジメントの3つのコントロールについてお話しします。アンガーマネジメントは衝動のコントロール、思考のコントロール、行動のコントロールの3つの流れを知り、この順番に取り組みます。練習していくことで慣れ、意識しなくても使えるようになります。
今回はまず、衝動のコントロール(6秒)について解説します。怒りを感じたとき、絶対してはいけないことは「反射」。考えることなく言い返す、仕返しをすることです。そうした言動は後悔につながります。諸説ありますが、私たちの協会では怒りが生まれてから理性が介入するまでに6秒ほどかかると考えています(図参照)。ただ6秒で怒りが消えるわけではありません。
子供たちの言動を見ていてとっさに怒鳴ってしまったり、保護者からの電話に思わず強い口調で言い返したりしたことはありませんか。それはまさに「反射」している状態です。子供からの信頼を失い、保護者との関係が悪化し、「あの一言を言わなければ」と後々悔やんでしまったことはありませんか。私自身も、いまだに後悔している失敗が幾つかあります。そんな経験があるからこそ、アンガーマネジメントが学校に必要だと理解することができ、僭越(せんえつ)ながら皆さんにお伝えしているのです。
理性が介入するまでの6秒をやり過ごすための方法をご紹介しましょう。その名も「怒りの温度計」です。イラっとしたら温度計を思い浮かべ、穏やかな状態が0、人生最大の怒り(これまでも経験したことがない、これからも経験することのないような強い怒り)を10とし、怒りに温度を付けます。温度は自分が思う数字で構いません。初めは高く付けますが、徐々に低い数値に収れんされていきます。例えば、「今日の気温は5度」と聞けば服装や靴などに気を付けるように、私たちは数値で多くのことを理解しています。怒りも同様で、数値を付けることで自分の怒りを客観化でき、対処ができるようになります。
これまでは怒りに温度を付けたことがなかったので、ついつい過去の強い怒りを思い出し、怒るという失敗を繰り返していたのです。これからはカッとなったら温度計を思い浮かべ、「今、何度だろう。6かな、5ぐらいかな?」と考えて温度を付け、6秒待ちます。意識だけで待つことはとても難しいのです。結果を急がずに、何十回、何百回とトレーニングを続けていってください。
学校の先生が感情的にならずに子供たちの前に立つことができたら、教室の雰囲気もおのずと穏やかになっていきます。「反射」せずに「6秒待つ」。まずはこの方法で衝動をコントロールしていきましょう。