【保護者と信頼関係を築く(8)】子どもの未来を共に描くための改革② 子どもを通した理解

【保護者と信頼関係を築く(8)】子どもの未来を共に描くための改革② 子どもを通した理解
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 保護者との信頼関係は目的化するのではなく、結果としてそうなったときによかったと振り返るべきものである。主役はあくまでも子どもたち。子どもがより良く変わっていくことで、結果として親との信頼関係が深まるという姿が理想的だ。もっとも、家に帰って子どもの口から「授業はよく分からなかったけど、たくさん遊べて楽しかった」という言葉が出るようでは駄目で、そんな状況では保護者と教師が子どもの未来を見据えた上で同じ土俵に立つことはできない。

 子どもたちの未来には、激動の時代が待ち構えている。十分でない食糧を世界中で争奪したり、気候変動が加速して災害が頻発したり、未知のウイルスが出現したりと、決して安穏ではいられない事態が予想される。先行き不透明な時代を生き抜いていくためには、どんな事態に遭遇しても臨機応変に対応する力が求められる。徒競走の順位にこだわっている場合ではない。

 「徒競走の順位なんて、ただの結果だよね」

 子どもたちの口からそんな言葉が出てくれば、保護者も同調するだろう。

 「そうか。お前、いつの間にか成長したなあ」

 その理由を聞く中で教師の名前も出るだろう。その瞬間、保護者と教師の距離は間違いなく近くなっているはずだ。

 保護者に同じ土俵に立ってもらうために必要なのが、こうした子どもの理解である。「まだ小さいのに無理ではないか…」という声も聞こえてきそうだが、決してそんなことはない。例えば、徒競走の事例に結び付く日常的な指導として、高学年であれば、「結果ではなく、取り組む過程こそが大事。結果として、たまたまうまくいくことはあっても、そこに努力という過程がなければ次には生きない」とズバッと核心を突くことができる。低学年であれば、「自分が1番になったとしたら、誰かが2番や3番になるということ。そうした自分以外のうまくいかなかった人のことも考えよう」と感情に訴える指導も可能だ。そうすれば、徒競走の順位に限らず、ピアノ伴奏者の選出、友達とのいさかいなど、あらゆる場面でそうした発想は生かされる。保護者がヒートアップしても、子どもの方から「そんなの意味ないよ」と保護者をいさめる結果となるだろう。

 教員は、保護者とは会う機会が限定されるが、子どもたちとは毎日顔を合わせる。子どもたちに未来に必要なものの見方や考え方を教え、それが保護者にも浸透していくことが、即効性はなくても効果的な方法だと考える。

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