【新たな教員研修の行方(4)】「教師の学び」はどのように具体化されているか

【新たな教員研修の行方(4)】「教師の学び」はどのように具体化されているか
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 前回は2005年以降の中央教育審議会(中教審)答申を概観しながら、12年の「学び続ける教員像の確立」が「教師の学び政策」のポイントになっていることに触れました。今回は「学び続ける教員像の確立」が、どのような形で具体化されることになったのかを見ていきたいと思います。

 「学び続ける教員像」を掲げた12年の中教審答申に続く、15年の中教審答申では「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~」と題して、「学び続ける教員を支えるキャリアシステムの構築」が提言されました。答申では「教員の主体的な『学び』を適正に評価し、その『学び』によって得られた能力や専門性といった成果を見える形で実感できるような取組やそのための制度構築を進めていくことが急務」とされました。

 そして、現在も各自治体で策定・運用されている「教員育成指標の作成」とそれに基づく「教員研修計画の策定」、それらを協議するために教育委員会と大学が連携する「教員育成協議会の設置」が行われました。さらに、大学が教職課程を編成する際に参考とする指針として「教職課程コアカリキュラム」の策定も提言され、こちらも国・教育委員会・各大学の共通理解の下で運用されています。

 ところで「学び続ける教員像の確立」は、実践的指導力や生涯にわたる資質能力の向上を引き継ぎながら、教師自身の向上心や学びの精神、探究力を尊重して、社会の急速な進展の中で知識・技能を絶えず刷新していく主体性や自律性に重きを置いていました。しかしながら、「教員育成指標」や「教職課程コアカリキュラム」などの指標は、運用の仕方によっては画一化を招きかねません。そのことによって教師の主体性や自律性が損なわれてしまうとすれば本末転倒です。

 また、「教員育成協議会」も教育委員会と大学が互いのビジョンを共有し、活発な議論ができなければ、大学が担う教員養成に対して、採用と研修を担う教育委員会が過度に介入することになってしまい、大学における教員養成の根幹が揺らいでしまいます。

 「支え」を強固にシステム化することで、個々の教師が有している自律性を損ねたり、「学ぶこと」を強制したりといった矛盾した状況を生じさせないためには、どうすればよいかが問われています。次回はさらに、現在起こっている教員研修改革について見ていきます。

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