【部活動の新しいカタチ(10)】地域移行で最も大事なこと

【部活動の新しいカタチ(10)】地域移行で最も大事なこと
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 地域移行で大切なのは、これまで培われた部活動の良さも移行していくことだ。具体的には、「人間形成」「人づくり」「教育的な活動」といった、学習指導要領において示されてきた「学校教育の一環」という考え方を踏襲する。勝利至上の活動ではなく、楽しい活動にすること、生涯にわたって活動していく基礎を培うようにすることなどだ。

 あいさつや礼儀、人への感謝や思いやり、助け合いや支え合いを学び実践し、それらを活動の核とする。単なるスポーツ教室やカルチャー教室にはしない。学校教育活動の中で培われた部活動の良さをしっかりと継承して、負の側面は決して移行しないことである。

 教員の「働き方改革」は喫緊の大きな課題である。だが、地域移行で最も大切なのは「子どものため」に移行することである。私が知っている先進地区の取り組みの多くが、「働き方改革」ではなく、「子どものため」を第一のスローガンとしていることは特筆すべきであろう。

 改革は良いことばかりではなく、痛みを伴うこともある。その痛みを子どもが受けるようなことがあってはならない。子どもが受ける痛みとは、「部活動改革」によりスポーツや文化活動を子どもができなくなるということだ。

 子どもが痛みを受けないようにするには、まず「なぜ部活動の地域移行なのか」を子どもや保護者にしっかりと学校などが説明する機会をもつこと、つまり説明責任を果たすことが必要である。

 生徒は「学校の部活動だからやる」といったようなこともある。日本スポーツ振興センターの災害共済給付は手厚いが、地域移行になると心配がある。また、生徒から会費(運営費)を徴収するが、学校での部費以上の会費がかかることもあり、反発が出ることも予想される。

 そこで部活動の地域移行の趣旨をしっかりと子どもや保護者に理解してもらい、地域の部活動に子ども(自分)が積極的に参加する体制や空気を生み出すことが必要だ。そして、地域移行によって活動のレベルが下がることがあってはならない。具体的に、人間づくりを根底とした指導観を持った専門的な技術指導者の配置、活動環境の整備・充実などが必要である。そのために指導者の研修は不可欠だ。元プロ選手やオリンピアンであっても、私たち渋谷ユナイテッドの活動理念や優れたコーチングを学んでもらうことは絶対に必要である。

 また、多くのスポーツや文化活動から子どもが選べるような地域移行でなければならない。子どもがしたい部活動があり、ないならつくる。学校の主人公である子どもを置き去りにしてはならない。子どもに不利益を生じない「子どものため」の地域移行にしていく必要がある。

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