一般社団法人渋谷ユナイテッド代表理事・前渋谷区教育委員会教育長
渋谷ユナイテッドの事務所があるビルでは、スタートアップ企業の若者が多く働いている。苦労はあろうが、ラフなスタイルで生き生きと仕事に取り組んでいるその姿に元気をもらっている。
さて今後、ユナイテッド部活動はサッカー部をロールモデルとして、各種目で拠点校を定め進めていく。学校や保護者、生徒の理解を得て、区内に例えば2カ所の活動拠点校を設け、完全なユナイテッド部活動としてのサッカー部にしていく。そして、これらをロールモデルとして、他の既存部活動も地域移行を図っていく。
地域移行で大切なのは、これまで培われた部活動の良さも移行していくことだ。具体的には、「人間形成」「人づくり」「教育的な活動」といった、学習指導要領において示されてきた「学校教育の一環」という考え方を踏襲する。勝利至上の活動ではなく、楽しい活動にすること、生涯にわたって活動していく基礎を培うようにすることなどだ。
「人を大事にすること」は、渋谷ユナイテッドのモットーである。スポーツや文化活動に取り組む者が人を大事にできないようでは事は進まないし、改革は成し得ない。渋谷ユナイテッドの活動は、地域あっての活動である。地域を大事にできない取り組みは長続きしないし、終わりを迎えるのも早い。
部活動改革に取り組む上で、中学校長との連携は不可欠であり肝である。その点、私は区内の中学校長を務めていたこともあり、今でも8校の校長とは気心の知れた仲であることがプラスに働いている。
全国の自治体では部活動改革が、教育委員会が主体になって進められている。それは、部活動が「学校教育の一環」であると学習指導要領(今後、見直しが検討されている)に示されているように、教育委員会が部活動の主管であるからだ。
私たちは、「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」の保護者理解を得るために、中学校のPTA連合会(各学校PTA会長の会合)で説明を行った。皆さんの反応は好意的であった。2021年10月に渋谷ユナイテッドを設立し、「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」を公に広報してから、各所からの反響は大きなものがあった。
経営資源はヒト・モノ・カネである。これに「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」を当てはめると、部活動の地域移行の3大課題は、①教員に代わる指導者等(受け皿)②活動場所等の確保(環境)③指導費等の運営費(財源)――である。
ユナイテッド部活動の文化部として、将棋部、料理スイーツマスター部、デジタルクリエイティブ&e-スポーツ部の3部もスタートさせた。東京都渋谷区には日本将棋連盟の将棋会館がある。また、服部栄養専門学校、株式会社ミクシィ、株式会社フロンティアインターナショナル、eスポーツ高等学院も区内にあり、技術指導をお願いしたところ、快くお受けいただいた。
「やりたい部活動が学校にない!」 「人数が足りなくて、学校チームとして試合に出られない!」 「きちんと教えられる指導者がいない!」 こうした生徒の声に応えるために、2021年のモデル実施を経て22年4月、渋谷ユナイテッドクラブの部活動を正式にスタートさせた。
2021年4月、「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」という名称でいよいよキックオフとなった。この時点では、まだ一般社団法人渋谷ユナイテッドは設立されていない。私は区スポーツ専門員として、当時のスポーツ部の山中昌彦部長、田中豊スポーツ振興課長、石谷望主任、上田理紗主任に支えていただき取り組んだ。
2019年、暮れを迎えようとしていた。 当時、東京都渋谷区の教育長だった私は定例的に行われていた長谷部健区長とのミーティングの席で、部活動のことが話題となった際に「次は部活動改革ですね」と発言した。以前、私は中学校教師だったが、部活動にも当然関わっており、部活動に対する問題意識を持っていた。区長は私の方を向いてうなずき、短く「進めてほしい」と言った。
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