【新たな教員研修の行方(5)】「新たな教師の学びの姿」は何が新しいのか

【新たな教員研修の行方(5)】「新たな教師の学びの姿」は何が新しいのか
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 前回は「教師の学び」を支えるシステムとその課題について説明しました。今回は2021年1月の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(以下、答申)と特別部会の「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて」(以下、審議まとめ)を見ながら、現在進められている「新たな教師の学びの姿」の内容を見ていきたいと思います。

 まず答申では、子供の学びの姿として「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的充実が掲げられ、それを実現する教職員の姿の一つに「教職生涯を通じて学び続ける」ことが掲げられました。そして、教員免許更新制の発展的解消が提言された「審議まとめ」では、「新たな教師の学びの姿」が以下の6つにまとめられています。①学び続ける教師②教師の主体的な姿勢③個別最適/協働的な教師の学び④目標設定・現状把握・積極的な「対話」⑤質の高い学習コンテンツ⑥成果の可視化と共有――です。目を引くのは、中教審答申で「子供の学び」として掲げられた「個別最適な学び」と「協働的な学び」が、教師の学びとしても描かれていることです。

 この審議まとめを受けて、教員免許更新制が廃止される時に示された「新たな研修制度のイメージ」が図の通りです。この図によると、任命権者である教育委員会が校長と教員の研修記録を作成し、校長は資質の向上に関する指導助言を教員に対して行います。指導助言については、管理職が教員と積極的に対話をすることが審議まとめで提言されました。

新たな研修制度のイメージ。出典:教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(概要)から転載
新たな研修制度のイメージ。出典:教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(概要)から転載

 この新たな研修制度をいかに具体化するかについて、目下、検討が進められているところですが、現時点では幾つか危惧すべき点や現場目線での戸惑いもあります。例えば、教師と子供の学びは同型なのか、管理的・監視的になってしまわないか、「対話」は本当に成り立つのか、参加した研修で何を得たかではなく、研修の履歴が教師の評価になってしまわないか、などです。

 これらの課題に対応していくためにも、次回からはいったん政策動向から離れて、教師の学びに関する理論的な解説をしていきます。

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