【新たな教員研修の行方(8)】「教師の学び」を左右する「経験」「振り返り」「関わり合い」

【新たな教員研修の行方(8)】「教師の学び」を左右する「経験」「振り返り」「関わり合い」
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 前回は、経験を通じた個人の行動や認識の変化に着目する「学習」という言葉と、他者やモノとの関わり合いに着目する「学び」という言葉について解説しました。簡潔にまとめると「経験による変化」とそれを生み出す「関わり合い」が、学びの土台になっています。では質の高い「教師の学び」はどうしたら生まれるのでしょうか。今回は「学び」の柱になっている「経験」と「関わり合い」に着目して、「教師の学び」を支えている要因を考えたいと思います。

 経験は「学びの資源」と言われますし、多くの人々が「経験から学ぶ」「経験を糧にする」という表現をよく用います。経験の質が学びの質を左右すると言ってもよいでしょう。そこで教師の力量形成や成長過程に関する研究では、どのような経験が「よい経験」と言えるのかが検討されてきました。例えば学習院大学の山﨑準二教授は、教師自身が力量形成の契機(きっかけ)になったと思う事柄を表の14項目にまとめています。いずれも多くの教師に共感してもらえる経験だと思います。

力量形成の契機

 一方で、これら全ての経験が全ての教師に起こるわけではありませんし、「よい経験」だからといって、無理やりそれを押し付けると「訓練」になってしまいます。また、同じような経験をした教師が全員、同じように経験を糧にできるかというとそうではありません。なぜなら経験が糧になるのは、適切な振り返り(省察・反省)によって、その人にとっての教訓が引き出されるからです。

 このように考えると「教師の学びの質=経験の質×振り返り」と表現できるでしょう。どんなに「よい経験」をしても意識的に振り返らなければ、その成果は期待できません。逆に特別な経験ではなくても、質の高い振り返りによって思わぬ気付きが得られることもあります。

 そこで大切なのが、他の人との「関わり合い」です。例えば、1人では得られないような経験を提供してくれる先輩教師や有意義な研修を紹介してくれる校長、一緒に振り返ってくれる同僚教師がいるか否かで、経験と振り返りの質は大きく異なります。さらに「関わり合い」は、学校の一員である意識や公教育を担う教員としての誇りを支える上でも、非常に重要な意味を持っています。次回は「新たな教師の学びの姿」に関する政策の最新動向を検討したいと思います。

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