「子どもがする授業」として、3番目に取り組んだのがFSP(フリースタイルプロジェクト)です。一般的には「個人総合」「個人探究」と呼ばれています。教職員の研修の後、6年生の子どもたちに本学習活動の説明をし、取り組んでみたいかどうかを話し合ってもらいました。肯定的な声が多かったので、「MP学習」と同様にネーミングを依頼しました。そうして決まったのが「FSP」でした。決めた理由は「自分で研究課題や計画を決めて自由に取り組むのが面白そうだから」とのことで、ALTにも相談しながら言葉を吟味していました。簡単な説明だけで活動の柱を見極める力に改めて驚きました。
FSPは、1回20時間で年2回行われます。実践するのは4年生以上の児童です。MP学習では学び方などは自分で決めることができましたが、学ぶ内容はあらかじめ決められていました。それが、FSPでは学ぶ内容・研究課題も自分で決めることになります。
実際に子どもたちが取り組んだのは、心理学の研究、模型飛行機づくり、気象の研究、ゲームづくり、イラスト、手品、手芸、スケートボート等々、多種多様でした。基本的に子どもたちは、これらの学びを自分一人で進めていきます。
家から持ち込んだパソコンを分解する児童たち
こうした学びを可能にした要因は大きく2つ挙げられます。一つは担任が事前に子ども一人一人と丁寧に相談しながら、取り組む内容を決めていたためです。この過程では日記なども活用し、興味・関心があることを明らかにしていきます。これは、教師の子ども理解が深まることにもつながっていきます。もう一つは、ICTの活用です。FSPのような学習活動は以前から実践されてはきたものの、定着しにくかったのは、子どもが取り組む内容分の数の「地域の先生」が必要だったからです。それがICTを活用することで、必要な情報に自分のタイミングでアクセスできるようになり、ある程度までは一人で学んでいくことが可能になりました。
こうして説明すると、FSPは全くの一人学びに見えます。しかし、FSPに関する子どものアンケートを見ると、約3割の子どもが「仲間と学び合うことができたので楽しかった」と回答していました。FSPもMPと同様、仲間や教師(FSPの時間は教師も自分の課題に取り組む)がそれぞれの課題に集中して取り組んでいる空間を共有するからこそ、一人一人が安心して学び続けることができます。むしろ、互いに全く違うことに取り組んでいるからこそ、競い合う意識もなく協力し合うことができ、自分も気付いていなかった「自分」と出会いながら学ぶことができるのかもしれません。