【子どもの不安を解きほぐす認知行動療法(3)】コロナ禍での子どもの不安

【子どもの不安を解きほぐす認知行動療法(3)】コロナ禍での子どもの不安
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 子どもの不安を考える上で、もう一つ避けては通れないテーマがあります。それがコロナ禍における影響です。

 新型コロナウイルスによる影響は身体のみならず、精神的な健康にも影響をもたらすことが分かっています。例えば、2020年に日本で行われた研究においては、軽度から中程度の心理的苦痛を有する人が36.6%おり、特に年齢が比較的若いことが心理的苦痛を感じるリスクとなることが報告されています 1)。

 この傾向は世界的にも認められていて、コロナ禍における不安の高い子どもの割合を見ていくと、おおよそ26%から37%くらいであると報告がなされています 2)3)4)。すごく大ざっぱに言えば、30人学級であれば10人前後の子どもたちが、コロナ禍では高い不安を示していたことを意味します。新型コロナウイルスの影響力の大きさや、それに関連する生活様式の変化などを考えると、こういった広範囲の影響が起きることもうなずけます。

 さて、私たちも日本の子どもたちを対象に、コロナ禍におけるメンタルヘルスの状態を調査しました 5)。対象者は6歳から15歳の子どもがいる家庭で、1984人の親から回答を得ました。調査の時期は20年11月27日から12月1日で、いわゆる第3波が広がっていた時期に当たります。オンライン調査を用いたので、全国各地から回答を得られました。この研究では、学校の開校状況に焦点を当てています。つまり、感染状況によって、学校が完全に閉校状態にあるグループ(完全閉校)、学校が部分的に閉じているグループ(部分開校)、そして学校が通常通り開校しているグループ(通常開校)の3グループに分けて、メンタルヘルスの状況を比較したのです。

 その結果、完全閉校のグループでは、通常開校のグループと比べて不安やうつが高いだけでなく、行為の問題なども目立つことが分かりました。さらに、不安については、部分開校のグループも通常開校のグループよりも高い傾向にあることが示されました。さらに、こちらの傾向は子どもだけではなく、親自身のメンタルヘルスにも当てはまっていました。すなわち、完全閉校のグループでは、親の不安やうつ、ストレス反応の高さも目立つことが分かりました。こちらデータは因果関係を示すものではありませんが、学校の開校状況と子どもと親のメンタルヘルスにはある程度の関連性があることが示されました。学校にいつものように通うことができるということは、子どもの心身の安定において重要だと言えるのかもしれません。

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