【もっと自由に、もっと深く学ぶために(8)】新しい学びと教師の心得

【もっと自由に、もっと深く学ぶために(8)】新しい学びと教師の心得
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 本連載でこれまで述べてきたような実践は、表面上は「新しい学び」に見えるかもしれませんが、授業にとって大切なものが変わるわけではありません。こうした学びによって子どもたちの学ぶ力が伸びれば伸びるほど、教師の役割はより基本的なものに戻っていきます。新たなことに取り組むというよりは、これまで行ってきたことの質を高めることを意識した実践と言えます。

「理解」を深めて授業に臨み、子どもたちの学びが動きだしたら「覚悟」を持って支援する
「理解」を深めて授業に臨み、子どもたちの学びが動きだしたら「覚悟」を持って支援する

 研究理論は「理解と覚悟」のみでした。「理解」は内容研究と子ども理解の2つに大別されます。「子どもがする授業」を推進するには、これまで以上に教師の内容研究が求められます。「授業は教師の内容研究を超えない」と、よく声を掛け合っていました。内容研究とは、教科論の深化とカリキュラム開発を意味します。子どもたちと学び合う内容に関して学習指導要領を読み込むことはもちろん、新書1冊程度を読み、一人の大人として自分なりの学びを深めておきたいものです。

 こうした教師の姿を子どもたちが直接目にすることはありませんが、授業を進めていく中では影響が出てくると思っています。また、授業中に指示や発問を直接しないからこそ、事前に子どもたちの生活を知り、環境を整えることが重要になります。子ども理解とは、内容研究により狙いとして育成を目指すことが明確になった資質・能力に合わせて、子どもの潜在的な見方・考え方や興味・関心を捉えておくことです。

 これらの「理解」の後、授業に臨みます。いくら「理解」を深めたつもりでも、子どもが学び始めれば、思い描いていた学びや計画とはずれが生じます。そんなときにこそ、子どもの学びの文脈に寄り添う「覚悟」が必要になります。なぜずれが生じたのか、どこがずれているのかを見極めつつ、教師の都合で学習を引っ張らないようにします。

 教師にとっては想定外、時には不都合な学びになることもあります。その際も、無理やり軌道修正することはせず、なぜそのように学んでいるのかを子どもに尋ねたり、見守ったりします。そうすることで、教師側に新たな気付きが生まれることもあります。いずれにしても学ぶのは子どもであり、子ども自身の思考の流れに合わなければ、教師の都合で強制しても思考が深まることは期待できません。むしろ、ずれをよく見極め、軌道修正して次の授業に生かそうと考える方が、カリキュラム・マネジメントの意味合いからしても大切です。

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