【授業理解を深める「予習」の指導 (4)】予習行動の背景要因

【授業理解を深める「予習」の指導 (4)】予習行動の背景要因
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 今回は、予習行動の背景要因に注目した調査とその結果を紹介します。この調査は栃木県の公立中学校に通う中学生219人の数学の学習を対象に行われたものです。この調査で注目したのは、学習者の動機付けの質(「面白いから勉強する」「叱られたくないから勉強する」など)、勉強に関する考え方(「勉強では理解することが大切だ」「勉強では暗記することが重要だ」など)、予習に対する役立ち感(「予習は授業を理解する上で役に立つ」といった認識)や負担感(「予習をするのは大変だ」という認識)です。

 分析の結果、まず予習に対する役立ち感は予習にポジティブな影響、予習に対する負担感は予習に対してネガティブな影響を与えており、「予習は役に立つと感じている生徒ほど予習をする」「予習を面倒だと感じている生徒ほど予習をしない」ことが示されました。また、動機付けの質や勉強に対する考え方が、予習に対する役立ち感や負担感に影響を与えることも示され、「勉強は面白い、役に立つ」といった動機付けが高い生徒ほど、予習への役立ち感が高く、負担感が低いことが分かりました。また、「勉強では理解することが大切だ」と考えている生徒ほど、予習は役立つと感じており、「とにかく解き方を覚えることが大切だ」と考えている生徒ほど、予習を負担に感じていることも示されました。

 たとえ生徒たちに予習してくるように伝えても、予習してこない生徒が出てくることは想像に難くありません。予習行動の背景要因を調べた調査結果は、こうした問題への対応策を考える上で有効です。この調査結果で重要となるのは、予習に対する役立ち感と負担感であり、役立ち感を高め、負担感を下げることが、予習を促す上での鍵になると言えるでしょう。

 予習が役立つことを実感させたいのであれば、例えば予習をして授業を受けた場合と、予習をしないで授業を受けた場合で理解度を比較させて、予習した方が授業が分かりやすくなること、授業中に質問しやすくなることを自覚させるなどの工夫が考えられると思います。

 また、予習に対する負担感を下げようとするのであれば、見開き1ページに目を通しておく程度の簡単な予習活動から始めることや、授業の冒頭に全員で予習をするようにして、慣れてきたら家庭で予習してくるように促すなどの工夫が考えられます。学習指導の際には、こうした背景要因を考慮しながら、予習を促していくことが大切だと言えるでしょう。

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