【授業理解を深める「予習」の指導 (10)】予習を学習指導に取り入れる際の注意点(本連載のまとめ)

【授業理解を深める「予習」の指導 (10)】予習を学習指導に取り入れる際の注意点(本連載のまとめ)
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 本連載ではこれまで、効果的な予習を実現するにはどうしたらよいのかについて、さまざまな実証研究を紹介してきました。予習を学習指導に取り入れる場合、まず目的を意識することが重要です。学習習慣を確立させることが目的なのであれば、何も予習にこだわる必要はありません。実際、児童生徒に課される宿題は、授業で学んだ内容の確認や反復練習を求めるものが多く、こうした背景には家庭学習の指導で学習の習慣付けが重視されていること、そのために児童生徒の負担感を減らすことが意識されていることがあるものと考えられます。

 しかし、学習習慣の確立だけでなく、家庭学習を通じて知識や思考力を向上させたいのであれば、学習を連続的に捉え、「思考に使える知識」の獲得を目指すことが重要となります。思考に使える知識とは、知識同士が関連付き、知識の「なぜ」について自分の言葉で説明できる「深い理解」を伴った知識のことであり、授業の中でこのような学びを目指す際には予習が重要となります。児童生徒にとって、初めて学ぶ内容を深く理解することは容易ではありません。私たちは頭の中にある知識と結び付けながら新たに入力された情報を理解しており、これから学ぶ内容について事前に知識を持っておくことは、深い理解に不可欠なのです。

 ただし、予習を促す場合、予習を機能させるための働き掛けについても押さえておく必要があります。単に教科書を読ませて予習させても、そもそも知識の「なぜ」を問う姿勢が弱い学習者の場合、期待される効果は得られません。こうした学習者には、問いを生成する手順を指導した上で、授業での目標を意識化できるように、予習で設定された問いについて自分なりに予測させたり、自分の予測に対する自信度を評定させたりする活動が必要になります。

 そして、何より重要なのは家庭学習の指導を単体として捉えるのではなく、授業と連動させて考えることです。これまでに紹介した研究では、授業次第で生徒の予習頻度や予習の仕方、予習の効果が変わることが示されていました。従って、予習を指導に取り入れるのであれば、何のために予習させるのかを意識した上で、「予習行動を促すにはどのような授業を行うべきか」「予習の効果を最大限に引き出すためにはどのような授業を行うべきか」といったように、自身が日々行う授業と連動させた形で指導を考えていくことが求められます。

 (おわり)

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