【「頼るスキル」の磨き方(2)】東日本大震災で明らかになった「受援力」の重要性

【「頼るスキル」の磨き方(2)】東日本大震災で明らかになった「受援力」の重要性
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 私は2011年の東日本大震災で、日本プライマリ・ケア連合学会の派遣医師として、宮城県石巻市の避難所アセスメントと妊産婦・乳幼児支援に携わりました。今日でも10年以上も前の支援活動を振り返り、本当に役に立てていたのか、自問自答する日々です。

 発展途上国の災害や紛争時と同じく、東日本大震災では災害時要配慮者(高齢者、障害者、難病患者、乳幼児、妊産婦、外国人など)の死亡率が高く、避難所では十分な支援を受けられないまま孤立と不安にさらされていました。現地でそのような妊産婦や新生児の救護に携わった際、支援を受けることを遠慮する被災者の方々が多く、「助けられることを肯定しないと、いくら周囲から支援の手が差し伸べられても助けられない」と感じ、歯がゆい思いをしました。

 そうした中、災害後のフェーズとともに移り変わっていく支援内容と規模の拡大に、私自身のプロジェクトマネジメントの能力が追い付かず、バーンアウトしてしまったのです。鬱々(うつうつ)した状態の中で自分を追い込んだ失敗体験を振り返り、「なぜ、助けてと言えなかったのだろう」と思います。そして、「自分が情熱を持って取り組めることでも、一人で切り盛りしているとどこかで限界が来る」ことに気付きました。

 私は、自分自身が人に頼れずパンクしてしまった経験から、「誰かに頼ってもいいのだ」という受援力を届けたいと思いました。国内の調査研究からも、援助が必要な人ほど支援を要請しないということが明らかになっており、個人が「受援の機会を活用しようとする姿勢」を育み、「受援に対するためらいと抵抗」を弱めるためにはどんな捉え方が必要なのかについて、研究が進められています。

 受援力は、これから社会の荒波にこぎ出さんとする子どもたちだけでなく、送り出す立場の人たち、応援する立場の人たちにも必要なものです。読者の中には、「自分一人で自分の人生を切り開いていきなさい」「何でも自分一人で解決できるようになりなさい」と、子どもたちの背中を押している人がおられるかもしれません。そう言われ続けた子どもたちが苦しい立場に追い込まれたとき、迷わずSOSを出せるでしょうか。

 子どもたちを応援する私たちにこそ受援力を肯定する姿勢が必要です。子どもたちを送り出す際、「頑張っているあなたは、助けられていい、守られていい、一人で孤独に立ち向かわなくてもいい」と言ってあげられるのは、読者の皆さんにほかなりません。支援を求めるその行動を認めることこそ、もしかしたらいつかどこかで、若い命を救うことにつながるかもしれないのです。

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