【個別・協働・探究で学校が変わる(2)】「サークル対話」が全ての土台

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 東京都の離島に小さな公立小学校がある。この学級の朝は一般的な学級と少し様子が違っている。子どもたちは思い思いの場所で読書をしたり、絵を描いたりしている。外で元気に走り回っている子もいれば、オリジナルのカードゲームやすごろくを製作中の子もいる。

 決まった時間になると、子どもたちは教室の一角に作られたサークルに集まってくる。サークルと呼ばれるこの場所はこの学級において特別な場所だ。

 きれいな円形に並べられたカラフルな椅子。隣の子と膝が触れ合うぐらいの距離。担任ももちろん、同じ輪の中に座る。席は決められていないので、子どもたちは毎日好きな場所に座る。どの席からもみんなの顔がよく見える。穏やかな雰囲気で朝の「サークル対話」が始まる。

 担任は子どもたちの会話に時折相づちを打ったり、簡単な質問をしたりする。必要最小限のことを穏やかな口調で話すだけだ。あっという間に10分が経過。今日のスケジュールを確認する頃になると、雰囲気が少し変わり始める。学習モードのスイッチが入る。「よし、じゃあ今日も一日はりきっていきましょう」担任の一言で子どもたちは一斉に立ち上がる。今日もワクワクする一日が始まる。

 この学級にとって、なぜ「サークル」が特別な場所なのか。昨年からこの学級は「イエナプラン」の理念の下で運営されている。以下、「サークル対話」についての解説をリヒテルズ直子『今こそ日本の学校に!イエナプラン実践ガイドブック』(教育開発研究所)より引用する。

 「ファミリー・グループのメンバー全員が円座になって行うサークル対話は、ファミリー・グループを、本当のファミリー(家族)のように信頼関係のあるチームとして育てていくうえで、なくてはならない大切な活動です。サークル対話では、グループ全員が、綺麗な円形を作って座ります。(中略)どの子も全員がほかの子の顔、すなわち一人ひとりの表情が見えるようにして座ります。お互いがお互いの表情を見ながら、相手の今日の気持ちを感じ取りながら、会話できる状況を作って行います。」(同書44頁)

 この学級では、他者から一方的に言動を決められたり制限されたりすることはない。担任の存在感は驚くほど薄く、子どもたちはその存在を意識していないようにさえ見える。そこには「自由」がある。自分の言動は自分が決める。その根底にあるのは「子どもたちは一個の人間として尊重され、信頼されている」という揺るぎない信念、そして「子どもたちが過ごす学級こそが未来の社会である」という思想だ。だからこそ、この学級の子どもたちは安心してありのままの自分でいられる。毎日繰り返されるこの「サークル対話」を通して、民主的で対話的な学級の文化が醸成されていく。

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