心理的応急処置(PFA)は、子どもたちが出合うかもしれない災害、犯罪、事故などの危機的な出来事の最中や直後、虐待を受けた子どもへの即座の支援的介入として、全ての支援に関わる人が実践できる初期対応です。今回は、中期以降の心理的支援について紹介します。
危機的な出来事を体験した人は、さまざまなストレス反応を示しますが、多くの人はPFAによる支援を受けるなどして、自分の力で回復していきます。一方、出来事から数週間から数カ月がたち、危機的な状況が収まり、安全と安心感、その他生存に関わるような緊急のニーズが満たされ、地域の行政機能が回復した時期においても、つらい反応に苦しむ人々がいます。
そのような人々に対する中期以降の支援に、「サイコロジカル・リカバリー・スキル(Skills for Psychological Recovery:SPR)」という心理的支援方法があります。SPRは、PFAと専門的な支援(治療)の間に位置付くものであり、子どもや青年、大人、家族の心の健康を守り、二次的な障害を防ぐことを目的としています。SPRでは、本人がその時点で必要としていることや困っていることに対処するための能力を高め、回復を促すために必要なスキル(訓練によって習得することのできる技術)を教えます。本人の適応的な行動を見いだし、それを支援しながら不適切な行動を防ぐように働き掛けます。SPRで用いられるスキルは、トラウマを体験した人々に対して効果の認められた心理的支援の方法であり、必要な部分だけを取り出して使えるように構成されています(図参照)。
サイコロジカル・リカバリー・スキル(SPR)に含まれる6つの支援要素(1)の文献を基に著者が作成)
SPRは、継続的的にサポートや支援を行うことのできる対人援助職(地域精神保健、保健医療、スクールカウンセリング、その他の地域の復興回復支援を行うNPOやボランティアなど)が用いることが想定されています。
PFAやSPRは、人々の自分で回復する力を引き出して支えるという共通した考え方に基づいて作られています。回復の過程は一人一人異なるため、支援を提供する相手(子ども)の回復のペースをないがしろにして、無理に押し付けてしまうと、さらに相手を傷つけることになります。相手のペースに合わせた支援を心掛けるようにしましょう。