ストレスやトラウマについて知り、対処方法を学習する機会を提供することは、子どものレジリエンス(回復力)を高めることにもつながります。
ストレス対処には、自分だけでは解決が困難な問題に直面したときに他者へSOS(助け)を求めることも含まれます。SOSの発信(児童生徒)と受け手との関係性を考えると、心の健康に関する教育は、普段子どもたちと接する機会の多い教師が行うのが理想的です。しかし、養護教諭、保健師、スクールカウンセラーなどとティームティーチングを行う、地域の支援者や地区担当保健師などの外部講師を活用するといったことは、より専門的なサポートが必要になった際の「つなぎ」に向けた関係づくりにもなります。
日常のストレスやトラウマには、望ましい対処があります。世の中で起こっている衝撃的な報道についても、「なかったことにしよう」「考えないことにしよう」(回避)を続けることは、必ずしも良い対処とは言えません。
・覚醒度と反応性の変化:リラクセーション。
・再体験(フラッシュバック):コントロールする(自分で体の力を抜き、楽しいイメージを思い浮かべる。意図的に他のものに注意を向ける)、出来事と向き合う。
・回避:危険と安全の区別をする。少しずつ避けているものにチャレンジする。
・安心・安全が保たれている環境で行う。
・参加の自由を保障する:ストレスやトラウマについて表現する際に、表現したくない場合はしないことも受け入れる。
・過去のトラウマ体験の影響を知る:人、場所、物、状況、記念日(出来事の起こった日)、あるいは恐怖や悲しみの再来といった感情によって思い出されることがある。また、心拍数の増加や身体的な感覚など、身体的な反応も思い出すきっかけになる。
・強い反応が生じた際に、落ち着かせるための対応を準備しておく。
例:個別のリラクセーション、養護教諭やスクールカウンセラーとの協力。
普段から、日常的なストレス対処などの「心の健康教育」が実施できていると、衝撃的な出来事の後の教育が導入しやすくなります。残念ながら、現行の学習指導要領の中では、心の健康教育のための授業枠が十分に確保されておらず、今後の改革が望まれます。