【子どものトラウマ回避(9)】保護者や教職員の心のサポート-支援者支援①

【子どものトラウマ回避(9)】保護者や教職員の心のサポート-支援者支援①
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 保護者や教職員は、家庭や学校など子どもたちが多くの時間を過ごす場において、子どものケアやサポートを提供する身近な支援者となります。今回は、子どもの周りの大人、保護者や教職員の心のサポートについてお伝えします。

 衝撃的な出来事やトラウマは、子どもだけではなく、同じ状況に居合わせた大人にも生じる可能性があります。その場合も、子どもと同じようにストレスやトラウマへの対処を行うことで回復していくことができます。

 さらに、支援者に特有の反応として、「立派な親(支援者)でなければならない」という考え方(認知)は、自分に向くと自責感や落ち込み(感情)を生じさせ、他者に向くとイライラや怒り(感情)を生じさせます。また、こうした認知を有すると、休まず働き続ける(行動)ようになり、心身共に疲弊した状態になりかねません。

 また、トラウマとなり得る出来事を体験した人と関わっている全ての支援者は、傷つき(二次的トラウマ)を体験することが知られています。支援者が「関わっている人と一緒にトラウマティックな出来事を再体験するときに生じる緊張と不安、および無力感、混乱、そして支援から孤立した感覚」は、「共感疲労」と呼ばれています※。具体的には、「関わっている人のことで、頭がいっぱいになる」「支援者としての仕事に縛り付けられる感覚がある」「ささいなことで怒りを爆発させたり、イライラしたりする」などのストレス反応が体験されます。

 私たちの研究グループが、コロナ禍における支援者(医療、教育、福祉関係者)のセルフケアの一環として行った調査があります。支援者としての体験とストレス反応について検討した結果、支援者特有のストレス反応の高さは、「家族や友人への発散」の高さ、および「職場のサポート」と「基本的生活・リラックス」の低さで説明できることが分かりました。家族や友人にイライラや不満をぶつけたり、逆に家族や友人がイライラしたり疲れていたりするように感じる場合は、共感疲労が生じている可能性があります。「寝る、食べる、休憩する」といった基本的な生活スタイルを大切にすること、身体をほぐしたり、リラクセーションを行ったりすることを心掛けましょう。

 子どもたちにとって、周りの大人(支援者)が安定した良い状態でいることは、回復に向けた大きな支えとなります。そのためにも、支援者自身のセルフケアを十分に行うようにしてください。

※Figley CR.(Ed.):Compassion fatigue,Coping with secondary traumatic stress disorder in those who treat traumatized,Brunner/ Mazel,New York,p1-20,1995.

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