いよいよ本連載も最終回となりました。前回は保護者や教師など、子どもの支援者の方々に向けて、支援者自身もストレスやトラウマを体験することやセルフケアを行うことの大切さについてお伝えしました。
なぜ、支援者は自身が支援をすることでつらい体験をするにもかかわらず、支援を続けられるのでしょうか。支援者は支援を行う中で、支援者特有のストレス反応とされる「共感疲労」といった否定的な感情体験だけでなく、喜びや充実感などの肯定的な感情体験を持つことが分かっています。こうした支援者の体験は「共感満足」と呼ばれています※1。これまでの研究から、共感疲労が高くても子どもとの支援的な関わりから得られる共感満足が高ければ、支援者のバーンアウト(燃えつき)を予防できることが示されています※2。
共感満足は、「子どもの笑顔を見る」など子どもとの直接的な関わり以外でも、仕事仲間との関係、支援者としての資質(技術や知識など)を持っていること、そして人生における満足感からも得ることができます。
自分の思うような支援ができない場合、つい「できていないこと」ばかりに目が向きがちですが、今一度、小さくても何か「できたこと」に目を向けてみてください。「今日は、〇〇さんに『頑張ってるね』と声を掛けることができた」「寝る前に子どもの話を聞く時間が取れた」など、自分に向けてのポジティブなメッセージを言葉に出したり、書き出してみたりするのもよいでしょう。例)こうしたやり方は子どもや児童生徒にも用いることができるので、ぜひ試してみてください。
この他にも、日本ストレスマネジメント学会のWebページには、「教育・特殊教育」「災害支援」「産業・労働」「基礎・医療」「ライフスタイル」の5つの実践領域ごとに、ストレスに対処するためのヒントが紹介されています。より専門的に学びたい方は、日本ストレスマネジメント学会認定ストレスマネジメント実践士の取得も目指していただければと思います。
子どもと子どもに関わる全ての人々が、心身ともにより良い状態(well-being)を保てるよう願っています。
(おわり)
※1 Stamm BH.:Measuring compassion satisfaction as well as fatigue,developmental history of the compassion satisfaction and compassion fatigue test,In Figley CR.(Ed):Treating compassion fatigue,1st ,p107-119,Routlege,NewYork,2002.
※2 藤岡 孝志:共感疲労の観点に基づく援助者支援プログラムの構築に関する研究.日本社会事業大学研究紀要57,201-237,2011.