改訂版では、教職員のリーガルナレッジ(法知識)の確実な理解と習得を目指しています。特に、第Ⅱ部では各章で生徒指導関連法規を提示して、説明をしています。
旧版の刊行以降、いじめ防止対策推進法をはじめ多くの関連法規が公布・施行されましたが、いじめ自死事案においては、いじめの定義や重大事態に関する教師の誤解が原因となっていることが少なからずあります。
法律の理解不足は、子どもの自死という取り返しのつかない悲劇につながります。子どもの命を守るためにも、教職員が関連法規やガイドラインを理解することは不可欠です。
現代の生徒指導実践においては、教職員の情熱や経験則だけでは不十分で、事案ごとに関連する法規の確実な知識が求められます。すなわち、リーガルナレッジの理解と習得が大前提となります。
また、教師の体罰や暴言による不適切な指導、わいせつ行為などの性暴力が後を絶ちません。これらは、学校や教師の信用を失墜させ、生徒指導を破綻させます。スクールコンプライアンス(法令順守)の徹底が、信用と信頼の基本です。
関連法規の理解と並んで重要となるのが、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の理解です。旧版では、なぜか取り上げられていません。日本は1994(平成6)年に批准して、効力が生じています。
同条約では、①子どもに対する差別の禁止②子どもの最善の利益を考えること③子どもの命や生存、発達が保障されること④子どもは自由に自分の意見を表明する権利を持っていること――という4つの原則が規定されています。
そのため、同条約の理解と実行は子ども、教職員、保護者、地域の人々にとって必須となります。同様の内容は、2022(令和4)年に公布されたこども基本法の第3条「基本理念」に反映されています。
合理的な根拠に欠ける、いわゆる「ブラック校則」問題は、子どもの権利条約やこども基本法に照らして見直す必要があるでしょう。校則は、学校生活の安全・安心を保障する基礎となります。校則の策定過程では子どもや保護者も参加して、熟議を経て校則の意義や合理的な必要性についてお互いが納得することが重要です。また、数年おきに校則を見直し、時代に応じて改定していくことも大切です。