【ネットいじめの今(1)】ネット社会と若者の変化一学生が大学に戻ってこない?!

【ネットいじめの今(1)】ネット社会と若者の変化一学生が大学に戻ってこない?!
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 この数年、コロナ禍によって社会の状況は大きく変化しました。とりわけ学校現場における最も大きな変化は、授業にタブレット端末を導入したことです。GIGAスクール構想により、インターネットを用いたオンライン授業や、教師が授業の様子を録画して配信するオンデマンド授業も、積極的に取り入れられるようになりました。こうした試みはどのような状況下でも「学びを止めない」ことへの新たな取り組みとして積極的に評価できる点です。しかし、ここにネット社会の負の影響はないのでしょうか。

 大学生も小中高校生と同様に、「大学に行きたくても行けない」状態が繰り返されてきました。感染者数の増加に伴い、大学に来られない学生への対応を前提としてオンラインを使った授業を続ける仕組みを整えてきました。現在、多くの大学は対面授業を再開していますが、そこで奇妙な現象が起こっています。「学生が大学に戻ってこない」という報告が多くの大学関係者から聞かれるのです。

 対面授業が再開したにもかかわらず、学生からは「できれば対面とオンライン、どちらかの方法を選べるように配慮してほしい」という声が数多く寄せられます。コロナ禍で対面授業が止まった時には、「対面で授業しないなら、授業料を返せ」とまで叫んでいたのはついこの間のことです。それなのに、オンライン型の授業に慣れてしまうと、その利便性が優先され、常態化しやすくなると考えられます。

 こうした傾向は高校でも見られるようです。次回以降にデータを紹介しますが、例えば、スマートフォンの持ち込みや使用を規制している高校では、対面や対話型の授業を好む傾向が強く、スマートフォンの自由な使用を認めている学校ほど、生徒間の対面コミュニケーションが脆弱(ぜいじゃく)になり、ネットトラブルが多くなる傾向があります。

 文科省が2022年に発表した「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、21年度における小中高校の不登校児童生徒数は29万5925人に上り、前年度よりも10万人近く増加し、過去最高を更新しました。コロナ禍にあって、不登校児童生徒数は増加し続けていることが分かります。20年以降、仕事であれ学校であれ、オンラインの波は社会の隅々にまで行き渡り、さまざまな手続きや仕事が自宅にいながらできるようになりました。しかし、こうしたネット社会の常態化が進むと、それが子どもたちにとっても「日常」となってしまい、彼らの価値観のみならず、行動までも変容させてしまっているような実態が見えてくるのです。

【プロフィール】

原清治(はら・きよはる)神戸大学大学院博士後期課程修了(学術博士、神戸大学)。佛教大学副学長・教育学部教授。専門は教育社会学、学校臨床学。関西教育学会会長、日本教育社会学会理事など。主な著書に『ネットいじめの現在(いま)』(2021年10月、ミネルヴァ書房)他多数。

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